IELTSのスピーキングでは、特定の単語を言ったから機械的に評価が下がるという仕組みではありません。フィラーそのものではなく、フィラーを含めた発話全体がどのように流れているかが重要です。この記事では、Um、Uh、Wellといったフィラーが持つ役割と、フィラーとヘジテーションの違い、そしてFluency and Coherenceの観点から見た自然な話し方の条件を整理します。
目次
「Um」「Well」を怖がりすぎていないか
フィラーが担っている「発話を管理する」という役割
フィラーと「発話が詰まっている状態」は同じではない
目指すべきは「フィラーゼロ」ではない
同じフレーズに頼りすぎると、かえって単調になる
よくある質問
まとめ
01 「Um」「Well」を怖がりすぎていないか
結論から言えば、Um、Uh、Wellを使ったこと自体が、それだけで評価を下げるわけではありません。ただし、フィラーやポーズ、言い直しが頻繁に起こり、発話の流れを妨げている場合は話が別です。この違いがどこにあるのかを、ここから順番に見ていきます。
日本人のIELTS受験者には、スピーキング中の言葉の詰まりに対して独特の恐れがあります。Umと言うと評価が下がる、Wellを使うと英語が下手に聞こえる、沈黙するくらいなら何も言わずに黙って考えたほうがいい、という思い込みです。
しかし、実際の英語の会話を録音して書き起こすと、母語話者もUm、Uh、Well、you know、I meanといった言葉を頻繁に使っています。準備された原稿を読み上げているのでなければ、考えながら話す以上、こうした言葉が挟まるのは自然な現象です。
日本の英語学習では、間違いのない完成した文を組み立ててから口に出す練習が中心になりやすく、考えながら話す、途中で言い直す、というプロセスそのものを練習する機会は多くありません。フィラーへの抵抗感は、その延長線上にあると考えられます。
IELTSも例外ではありません。話し手が澱みなく話し続けることを前提にした試験ではなく、実際のコミュニケーションに近い状態でどれだけ意味を伝えられるかを見る試験です。加点・減点方式でチェックリストを埋めていく採点ではなく、話の流れ、語彙の幅、文法の正確さ、発音を総合的に見て、どのバンドスコアの説明に最も近いかを判定します。Umと言った瞬間に何かが差し引かれる、という仕組みそのものが採点表には存在しません。
02 フィラーが担っている「発話を管理する」という役割
フィラーは、話し手が発話をどう組み立て、どう進めるかを管理するための言葉です。時間を作ることはその一つの機能にすぎず、フィラーごとに役割が異なります。
Um、Uh:次の語や表現を探し、発話を止めずに続けるための時間を作る
Well:即答せず、これから話す内容の方向性を考える
I mean:直前に言ったことを修正したり、言い換えたりする。What I mean by that is ...(つまり私が言いたいのは)のように文単位で使うと、説明を補うつなぎとしても使える
You know:聞き手との共有感覚を作り、話についてきているかを確かめる
たとえば、Do you think it's important to keep in touch with old friends? と聞かれたとき、次のように答えを組み立てることができます。
Q. Do you think it's important to keep in touch with old friends?
Well, I'd say it really depends on the friendship. Some connections are worth keeping, and others naturally fade over time.
ここでのWellは、考える時間を作ると同時に、これから話す内容がすぐには一言で言い切れないという方向性を予告する働きも持っています。I'd sayも同様に、単なる無駄な言葉ではなく、話し手が考えをまとめている数秒の間、聞き手に今答えを準備しているということを伝える合図です。
同じ「考える数秒」でも、間の埋め方で印象は変わる
間の埋め方 聞き手に伝わりやすい印象
無言のまま数秒考える 話が止まった、答えに詰まったという印象になりやすい
Well… / I'd say… などを添えて考える 考えながら話しているという印象になり、発話が途切れた感覚を与えにくい
短い沈黙だけで不自然になるわけではありません。ただ、考えている数秒の間にWell…やI'd say…を自然に挟むと、話しながら考えていることが聞き手に伝わりやすくなります。
03 フィラーと「発話が詰まっている状態」は同じではない
フィラーが自然なものだとしても、フィラーが続けば話が詰まって聞こえることがあります。ここで区別しておきたいのが、フィラーという言葉そのものと、フィラーなどによって発話の流れが妨げられている状態は同じではないという点です。
同じ内容を伝えるのに、聞こえ方が変わる3つの発話
発話の例 聞こえ方
Well, I think it's important because it helps people stay connected. フィラーは一度だけで、そのあとすぐ内容が続く。考えながら自然に話しているように聞こえる
Um… I think… um… it's… um… important because… フィラーと言い直しが連続し、内容がなかなか出てこない。ヘジテーションが続いているように聞こえる
I think it's important because…(このあと長い沈黙) フィラーすら挟まれず、発話そのものが止まってしまったように聞こえる
この記事でいちばん伝えたいこと
問題なのはUmという単語そのものではなく、フィラーやポーズ、言い直しなどを含めた発話全体の流れです。特に、フィラーを挟んだあとに内容がスムーズに続かず、発話が前に進まなくなる状態は、Fluency and Coherenceの評価に関わってきます。
IELTSスピーキングの採点基準であるBand DescriptorsのFluency and Coherenceは、フィラーの数を数える項目ではなく、話がどれだけ自然に流れているか、内容がどれだけ一貫してつながっているかを見る観点です。採点基準の詳しい内容は以下の記事で確認できます。
スピーキング
IELTSスピーキング採点基準 Band Descriptors
言い直し(self-correction)も同じ発想で考えられます。話している途中でI mean、or rather...などを使って表現を言い換えるのは、伝えたい内容をより正確にしようとする行為であり、フィラーと同じく自然な発話の一部です。問題になるのは、言い直しがあること自体ではなく、言い直しても内容がまとまらず、発話が前に進まなくなることです。
04 目指すべきは「フィラーゼロ」ではない
ここまでの内容から、対策の目標を「フィラーを一切使わない」ことに置くと、かえって逆効果になりやすいことが見えてきます。
Umは禁止、Wellも禁止、沈黙もしない、と意識しすぎると、次のような現象が起きがちです。
I think... I think... のように、同じつなぎ言葉を機械的に繰り返してしまう
フィラーを避けようとして、かえって長い無言の間ができてしまう
話す前に文全体を頭の中で完成させようとして、テンポが遅くなる
いずれも、フィラーそのものより発話の流れを損なう要因になります。フィラーの使い方を練習するときの目標は、フィラーをゼロにすることではなく、フィラーやヘジテーションが混じっても話を前に進め続けられることに置くほうが実践的です。フィラーを使うことを恐れるのではなく、フィラーのあとに何を言うかを意識するほうが、対策としては近道になります。
ヘジテーションを段階的に減らしていく練習方法は、以下の記事で扱っています。今回の記事が「フィラーは怖がらなくていい」という前提を整理するものだとすれば、あちらは、その前提のうえで詰まりを減らしていく具体的な練習法を扱う記事です。
スピーキング
IELTSスピーキング初級者向け:ヘジテーションを減らすステップ式練習法
05 同じフレーズに頼りすぎると、かえって単調になる
フィラーの中には、時間稼ぎの型として定着しているフレーズもあります。代表的なのがThat's an interesting question. I've never really thought about it, but...です。この一文を言っている数秒の間に答えの内容を組み立てることができるため、Part3のような即興性の高い質問に強い型として、当サイトのPart3表現集でも紹介しています。
スピーキング
IELTSスピーキングPart3で使いこなしたい頻出表現30選
That's an interesting question. 自体が悪いわけではありません。時間稼ぎの型として今でも十分に機能します。ただし、どのPart3の質問にも同じ表現を機械的に当てはめると、回答がパターン化して聞こえる可能性があります。避けたほうがいいのは特定のフレーズではなく、一つの表現だけに依存することです。
対策になるのは、フィラーの型を1つだけ用意するのではなく、質問の内容に応じて使い分けられるように複数の言い回しを持っておくことです。
Well, I'd say... :即答せず、方向性を考えながら切り出す
I think it depends on... :条件によって答えが変わる質問への切り出しに使える
That's an interesting point. :質問への反応を挟んでから内容に入る
I'd probably say... :断定を避けつつ考えを述べる
フィラーを1種類に固定しないことが、結果として自然な受け答えにつながります。用途別にもう少し多くの言い回しを知っておきたい場合は、以下の表現集も参考にできます。
スピーキング
IELTSスピーキングのフィラー表現20選:Um・Well以外にも使える言い換え集
06 よくある質問
IELTSスピーキングでUmやUhを使うと評価が下がりますか。
いいえ。IELTSは加点・減点方式の試験ではなく、話の流れや内容を総合的に見て評価する試験です。UmやUhを使ったこと自体が採点表に記録されて差し引かれる仕組みはありません。
フィラーをまったく使わずに話したほうが評価は上がりますか。
上がるとは限りません。フィラーを完全に避けようとすると、同じつなぎ言葉の繰り返しや長い沈黙につながりやすく、かえって発話の流れが不自然になることがあります。
フィラーとヘジテーションの違いは何ですか。
フィラーはUmやWellのように、考える時間を作ったり発話を管理したりするための言葉そのものです。一方でヘジテーションは、話す途中で言葉に迷ったり、ためらったりすることを指します。フィラーや言い直し、沈黙などを伴うことがあり、こうした状態が頻繁に起こると発話の流れが妨げられます。
沈黙して考えるのとフィラーを使って考えるのでは、どちらが自然に聞こえますか。
一般的には、Well…やI'd say…のような言葉を添えて考えるほうが、考えながら話している印象になりやすく、無言の沈黙より発話が途切れた感覚を与えにくくなります。
That's an interesting question.のようなフレーズは使わないほうがいいですか。
使うこと自体に問題はなく、時間稼ぎの型として有効です。ただし、どの質問にもこの一文だけを機械的に当てはめると応答がパターン化して聞こえやすいため、複数の言い回しを使い分けるほうが安全です。
フィラーの使い方はFluency and Coherenceのどこに関わりますか。
フィラーの数そのものではなく、フィラーを挟んだあとに内容がどれだけ自然に続くか、発話全体の流れが保たれているかが、Fluency and Coherenceで見られる観点に関わります。
フィラーの使い方より先に、詰まりそのものを減らす練習をしたほうがいいですか。
詰まりを段階的に減らしていく練習は、この記事とは別に扱っています。この記事はフィラーへの思い込みを整理するもので、具体的な練習法はヘジテーション練習の記事で確認できます。両方を合わせて使うと対策がしやすくなります。
ネイティブスピーカーもフィラーを使うのですか。
準備された原稿を読み上げているのでない限り、母語話者も考えながら話す場面ではUm、Uh、Well、you knowなどを日常的に使っています。
07 まとめ
IELTSでは、特定のフィラーを使ったことだけを理由に評価が下がるわけではありません。重要なのは、フィラーやポーズを含めた発話全体が、どれだけ自然に続いているかです。
フィラーは考える時間を作るための自然な道具であり、それ自体は問題にならない
評価に関わるのは、フィラーのあとに内容がスムーズに続くかどうかという発話全体の流れ
目指すのは「フィラーゼロ」ではなく、詰まっても話を前に進め続けられること
便利なフレーズほど1つに頼らず、複数を使い分けたほうが単調にならない
短い沈黙を恐れて無理にフィラーを入れる必要はありません。ただ、考える時間が必要なときにWell, I'd say...のような一言を自然に添えられると、話しながら考えていることが聞き手にも伝わりやすくなります。