「高齢者は長年税金を納めてきたのだから、公共交通機関を無料にすべきだ」。ライティング・タスク2の定番の論拠ですが、この「すでに税金を払った」を英語にするとき、多くの学習者が「すでに」をそのまま already と訳します。一見素直な発想ですが、組み合わせる時制によっては、ネイティブが読むと少し座りの悪い英文になります。
問題は already という単語選びそのものよりも、時制との組み合わせにあります。この記事では、already と現在完了の関係を出発点に、「すでに」の訳し分け、そして already に頼らずに論拠を強くする書き方までを整理します。
目次
"Senior citizens already paid taxes" のどこが気になるのか
already は現在完了と組むのが基本
「すでに」の訳し分け:already だけではない
already に頼らずに論拠を強くする
まとめ
01 "Senior citizens already paid taxes" のどこが気になるのか
まず、実際の出題を想定してみましょう。公共交通機関に関するトピックは、ライティング・タスク2でよく見かけます。
Question
Some people believe that public transport should be free for senior citizens. To what extent do you agree or disagree?
公共交通機関は高齢者に無料で提供されるべきだという意見があります。あなたはどの程度賛成、または反対しますか?
賛成の立場でエッセイを書くとき、多くの学習者が最初に思いつく論拠が「高齢者はすでに税金を払ったのだから」というものです。そして頭の中の日本語をそのまま英語に置き換えると、次のような文ができあがります。
不自然な文
Senior citizens already paid taxes, so the government should offer them free public transport.
意味は十分に通じますし、コミュニケーションが壊れるほどの誤りではありません。ただ、この文には見直せる点が2つあります。一つは、already と単純過去を組み合わせているという時制の問題。もう一つは、「すでに」を機械的に already に置き換えているという発想の問題です。順番に見ていきましょう。
02 already は現在完了と組むのが基本
already は「その時点までに、もう完了している」ことを表す副詞です。基準になる時点が「今」であれば、過去から今までのつながりを表す現在完了と組み合わせるのが標準的な形になります。
座りが悪い
Senior citizens already paid taxes, so the government should offer them free public transport.
標準的な形
Senior citizens have already paid taxes, so the government should offer them free public transport.
単純過去は、出来事を「過去のある時点の話」として今から切り離して述べる形です。already paid と書くと、「いつまでに完了していたのか」という基準点が文の中で宙に浮いてしまいます。この論拠で伝えたいのは、「税金を払ってきた事実が今も有効で、だから今、その見返りを受ける資格がある」ということのはずです。過去と現在をつなぐ現在完了のほうが、この意図に合います。
補足しておくと、アメリカ英語の会話では already と単純過去の組み合わせも普通に使われます(I already ate lunch. など)。誤りと言い切れるものではありませんが、アカデミックライティングでは現在完了が標準で、IELTSのエッセイでも現在完了にしておくのが安全です。この点は拙著『英語ライティングの鬼100則』の37ページでも解説していますので、あわせて参照してください。
なお、基準になる時点が過去にあると明示されている場合は、過去完了と組み合わせることができます。
By the time they retired, most workers had already paid taxes for decades.
03 「すでに」の訳し分け:already だけではない
時制の問題を押さえたところで、もう一段掘り下げます。そもそも「すでに」を見た瞬間に already と結びつける習慣そのものを、一度疑ってみる価値があります。「すでに」は基本的に already に対応しますが、常に1対1というわけではなく、文の種類やニュアンスによって対応する表現が変わります。
表現 使う場面 例文
already 肯定文で「もうすでに〜した」という完了 They have already paid their taxes.
yet 疑問文の「もう〜しましたか」、否定文の「まだ〜していない」 The government has not yet addressed this issue.
by now 「今頃はもう」という時間的な推測・強調 By now, most people are accustomed to shopping online.
previously / earlier 単に「以前に」という事実 This service was previously provided free of charge.
もう一つ知っておきたいのは、already の持つ含みです。already は「もう済んでいる」ということを、聞き手の想定との対比の中で伝える単語です。「もうとっくに終わっていますよ(まだだと思っていたかもしれませんが)」という響きが乗ることがあります。一方、日本語の「すでに」はもっと中立に完了を述べることが多く、その場合は現在完了だけで意味が足りてしまいます。
Technology has changed the way we communicate.
「テクノロジーはすでに私たちのコミュニケーションを変えた」と言いたいとき、この文に already は必須ではありません。現在完了そのものが「変え終えて、その結果が今ある」という意味を担っているからです。already を足すのは、「もうとっくに変わっている」という点を特に強調したいときだけで十分です。「すでに」が出てくるたびに already を挿入すると、文が重くなるうえに、不要な対比の含みまで運び込んでしまいます。
04 already に頼らずに論拠を強くする
冒頭の文に戻りましょう。時制を直した Senior citizens have already paid taxes, so ... は、文法的には整いました。ただ、エッセイの論拠としてはまだ物足りなさが残ります。読み手に本当に伝えたいのは、「現役時代を通じて何十年も納税し、社会に貢献してきた。だからその見返りを受けるのは公平だ」ということのはずです。それなら、already という一語に頼るより、期間や貢献の中身を具体的に示す表現に置き換えたほうが、論拠に厚みが出ます。
期間・貢献を具体化した形
Senior citizens have paid taxes throughout their working lives, so it is fair that they receive free public transport.
Older people have contributed to society through decades of tax payments.
Taxpayers have already fulfilled their obligations to society.
throughout their working lives や decades of のような期間表現は、「すでに払った」という事実を「どれだけ長く払い続けてきたか」という重みに変換してくれます。3つ目の fulfilled their obligations は「義務を果たした」という視点への言い換えで、already を残す場合でも、動詞側を具体化することで論拠が締まります。
ここで行っているのは、「すでに」の直訳を探す作業ではなく、「この論拠で何を伝えたいか」から逆算して表現を選ぶ作業です。これは日本語からの直訳を離れるパラフレーズの発想そのもので、語彙の評価だけでなく、エッセイ全体の説得力にも関わる考え方です。
IELTS学習アプリ
パラフレーズ練習アプリ
書き始めの2語からパラフレーズ文を作る、時間制限つきのトレーニング
05 まとめ
最後に、この記事のポイントをまとめます。
「すでに〜した」を英語にするときは、まず現在完了を検討する。already と単純過去の組み合わせは、書き言葉では座りが悪い
疑問文・否定文では yet、「今頃はもう」なら by now、単なる「以前に」なら previously と、文脈に応じて訳し分ける
現在完了そのものが「すでに」の意味を担うため、already を訳出しなくてよい場面は多い
論拠として使うなら、throughout their working lives のような期間表現で具体化すると説得力が増す
「すでに」と already のように、日本語と英語の単語がきれいに1対1で対応しない例はほかにもあります。日本語の単語からではなく、伝えたい内容から英語表現を選ぶ習慣をつけていくと、エッセイの英語は着実に自然になっていきます。関連して、日本語と意味がずれるカタカナ語の動詞についてまとめた記事もありますので、あわせてご覧ください。
ライティング・タスク2
その「クレーム」、英語では通じません。日本語と意味がずれたカタカナ動詞4選