帰国生入試でIELTSを求められて、まず知りたくなるのは必要な点数でしょう。ところが調べ始めると、大学ごとに数字が違うだけでなく、そもそもスコアが合否にどう関わるのかが大学によって違うことが分かってきます。出願の条件にしている大学もあれば、書類審査の材料の一つとして扱う大学もあります。
この記事では、帰国生入試の募集要項でIELTSがどう書かれるのかを整理し、必要スコアの読み方と、いつまでに取っておけばよいのかの決め方をまとめます。海外の高校に在学している方と、帰国してから受験する方の両方を想定しています。
01帰国生入試でIELTSはどの位置に置かれるか
帰国生入試(帰国子女入試、海外就学経験者入試などとも呼ばれます)でのIELTSの扱いは、大きく3つに分かれます。
| 扱い | 募集要項での書かれ方 | スコアの重み |
| 出願資格の一部 | 「次のいずれかを満たす者」の中に外部検定のスコアが並ぶ | 基準に届かないと出願できない |
| 提出書類の一つ | 「英語運用能力を証明する書類を提出すること」 | 基準は明示されず、書類審査で評価される |
| 英語試験の代替 | 「一定のスコアを有する場合、英語の学力試験を免除する」 | 当日の科目数が変わる |
ここで確認しておきたいのは、自分が受ける大学がどれに当てはまるかです。基準が書かれていない場合、スコアが高いほど有利になるとは限らず、他の書類との組み合わせで見られます。逆に出願資格として使われている場合は、0.5足りないだけで出願できなくなります。
国内の一般入試での使われ方も同じように3つの型に分かれます。併願する場合は、両方の型を並べて目標を1つに決めるほうが対策が分散しません。
IELTS総合対策
日本の大学入試でIELTSはどう使われるか:出願資格・得点換算・加点の3つの型
02必要スコアが大学ごとに違う理由
帰国生入試で示されるスコアの水準は、大学や学部によって幅があります。この幅は、大学が入学後に何を要求するかの違いから来ています。
- 英語で行う授業の量:英語で講義を受ける学部ほど、求める水準が上がります
- 選抜の中でのスコアの役割:出願資格として使う場合は、届いた人を広く受け入れるために低めに置かれることがあります
- 他の書類との組み合わせ:現地の成績、活動報告、小論文、面接をどれだけ重く見るか
もう一つ、数字を見るときに区別しておきたいのが、募集要項に書かれた基準と、実際に合格した人のスコアは別だということです。基準は出願できる下限であって、その水準で合格が決まるという意味ではありません。基準が6.0の大学に6.0で出願するのは条件を満たしていますが、他の書類との総合で選抜されるため、余裕を持たせておくほうが選択肢は広がります。
つまり、必要スコアの数字だけを大学間で比べても、難しさの比較にはなりません。出願資格として6.0を求める大学と、書類審査でスコアを見る大学では、同じ6.0の意味が違います。
技能別の下限がある場合は、そちらが実質の条件になる
オーバーオールの基準に加えて、各技能の下限が設けられていることがあります。この場合、実質の難しさを決めるのは下限のほうです。オーバーオール6.0は平均で届きますが、各技能5.5以上という条件は、苦手な1技能を必ず引き上げなければ満たせません。
03出願資格を確認する順番
帰国生入試は、英語のスコアより先に満たさなければならない条件があります。ここを確認しないままIELTSの対策を始めると、そもそも出願できないことがあとから分かる、ということが起こります。確認は次の順番で進めましょう。
| 順番 | 確認すること | 典型的な条件の形 |
| 1 | 海外での就学年数 | 継続して2年以上など、期間の下限が定められている |
| 2 | 帰国してからの経過年数 | 帰国後◯年以内という上限が定められている |
| 3 | 現地での学校の種類と卒業資格 | 現地校、日本人学校、インターナショナルスクールで扱いが変わる |
| 4 | 英語の外部検定のスコア | IELTSのオーバーオールと技能別の下限 |
| 5 | 現地の成績や統一試験の結果 | 成績証明書、現地の修了資格や統一試験の成績 |
3の学校の種類は、判断が分かれやすいところです。現地校とインターナショナルスクールで扱いを分ける大学、日本人学校での就学期間を年数に算入しない大学など、書き方が細かくなります。自分の経歴が要項の文面のどれに当たるか判断できないときは、入試課に確認しておくと、あとで出願できないという事態を避けられます。
1から3は、努力で変えられない条件です。ここで対象外になる大学は、早い段階で候補から外せます。IELTSの対策に時間を割く前に、まずこの3つで候補を絞りましょう。
4のスコアは、いま足りていなくても取りに行けます。5の現地の成績は、対策というより日々の学業の結果として積み上がるものなので、IELTSの学習時間を確保するときに、現地の授業を犠牲にしないほうがよい理由がここにあります。
04いつまでに取るか、どこから逆算するか
帰国生入試は、一般選抜より早い時期に出願する大学も多くあります。秋に出願する大学を受けるなら、高校3年生の夏までにスコアを用意しておく想定で考えると、その後の再受験にも余裕を持たせられます。
逆算するときは、受験日ではなく、証明書が出願先に届く日から数えます。海外から受験して日本の大学に提出する場合、郵送の日数も見込む必要があります。
- スコアの有効期間:一般に受験日から2年間が英語力の証明としての目安です。高校2年生の秋に取ったスコアも多くの場合は使えます
- 大学が定める受験時期:この目安とは別に、出願日から何年以内という条件が付くことがあります
- 再受験の余地:締切の数か月前に1回目を受けておくと、結果を見てから受け直す余裕を作りやすくなります
出願の時期から逆算した例
秋に出願する大学を第一志望にする場合、次のような受け方になります。高校2年生の冬から3年生の春にかけて1回目を受け、現在地を数字にします。春から夏に足りない技能を対策し、夏に2回目。ここで届かなければ、出願直前にもう1回。この形にしておくと、1回目の結果を見てから対策の方向を変える時間が残ります。
逆に、高校3年生の夏に初めて受験する計画にすると、1回目の結果が想定より低かったときに、対策の期間も再受験の機会もほとんど残りません。初回は現在地を測るためのものと考えて、早めに受けるほうが計画を立て直しやすくなります。
複数の大学に出す場合は、締切がいちばん早い大学に合わせます。最後の受験日が決まれば、そこから逆算して学習の期間が確定します。
05海外の高校に在学しながら受ける場合
現地の高校に通いながら日本の帰国生入試を目指す場合、時間の使い方が国内の高校生とは変わります。現地の課題と成績評価が続いている中で、IELTSの学習時間を別に作ることになるからです。
現地の学業を削らない
現地の成績は出願書類として提出することが多く、IELTSのために成績を落とすと、片方を上げてもう片方を下げる結果になります。IELTSに充てる時間は、現地の課題を終えたあとに残る時間の中で決めるほうが、結果として両方が残ります。
英語で生活していてもライティングは別に対策が要る
現地校に通っていると、リスニングやスピーキングは英語環境の中で伸びている場合がある一方、IELTSのライティングは形式が独特です。タスク2は決められた時間で意見を組み立てて書く課題で、現地の学校で書くエッセイやレポートとは、求められる長さも構成も評価の観点も違います。英語で生活しているのにライティングだけ伸びない、という相談は珍しくありません。
学校の休みの時期が日本とずれる
南半球の国では学年の区切りが日本と違い、長期休暇の時期もずれます。日本の高校生向けの学習計画をそのまま当てはめると、まとまった時間が取れる時期の想定が合いません。現地の学年暦を先に書き出して、その中で学習量を増やせる時期を決めましょう。
受験の機会と時差を確認する
IELTSは多くの国と地域で実施されていますが、会場の数と実施頻度は場所によって差があります。受験できる日程を先に調べてから学習の期間を決めると、締切に間に合わないという事態を避けられます。
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オンラインでのIELTS対策
06スコアが届かなかったときに残る選択肢
締切が近づいてもスコアが基準に届かないことがあります。この段階で取れる手は、残り時間によって変わります。
| 残り時間 | 検討できること |
| 3か月以上 | 足りない技能を特定して集中的に対策する。受験を2回組む |
| 1〜2か月 | 1技能だけ足りない場合は、条件を満たしていれば One Skill Retake を検討する |
| 1か月未満 | スコアを条件にしない入試方式や、基準が届く範囲の大学に候補を広げる |
1技能だけが基準に届かない場合、その技能だけを受け直せる One Skill Retake という制度があります。受けられる条件と、受け直した結果が下がったときの扱いは、別の記事で整理しています。大学がこの制度で取得したスコアを受け付けるかどうかは、募集要項で確認しておきましょう。
IELTS総合対策
IELTS One Skill Retake(1技能のみの再受験)とは?対象者と申込方法:スコアが下がった場合の扱いも解説
07保護者の方が確認しておくとよいこと
帰国生入試は、出願条件が細かく、書類も多くなります。受験生本人が現地の学業と並行して全部を追うのは負担が大きいので、次の3つは保護者の方が持っておくと進みやすくなります。
- 出願条件の一覧:大学ごとの就学年数、帰国後の年数、必要スコア、締切を1つの表にまとめる
- 書類の手配:成績証明書、在学証明書、スコアの証明書。発行にかかる日数はそれぞれ違います
- 受験の回数と費用:受験料は日本国内では2026年7月1日時点で27,500円(税込)。国によって金額が変わります
条件の確認を分担しておくと、本人は学習と現地の学業に集中できます。判断に迷う条件が出てきたときは、大学の入試課に直接問い合わせるのがいちばん早い方法です。
08よくある質問
帰国生入試ではIELTSで何点必要ですか。
大学と学部によって異なり、共通の基準はありません。出願資格として基準を明示する大学と、提出書類の一つとして基準を示さない大学があります。まず自分が受ける大学がどちらの扱いかを募集要項で確認しましょう。
オーバーオールが基準に届いていれば出願できますか。
技能別の下限が設けられている場合は、その条件も満たす必要があります。下限がある場合、実質の難しさを決めるのは下限のほうです。平均で届いていても苦手な1技能が足りないと要件を満たしません。
IELTSの対策より先に確認しておくことはありますか。
海外での就学年数、帰国後の経過年数、現地で通った学校の種類の3つです。これらは努力で変えられない条件なので、ここで対象外になる大学は早い段階で候補から外せます。
いつまでにスコアを取っておけばよいですか。
帰国生入試は一般選抜より早い時期に出願する大学も多くあります。秋に出願する大学を受けるなら、高校3年生の夏までに用意しておく想定で、締切のいちばん早い大学に合わせて逆算しましょう。逆算するときは受験日ではなく、証明書が届く日から数えます。
高校2年生のときのスコアも使えますか。
IELTSのスコアは、一般に受験日から2年間が英語力の証明としての目安とされているので、多くの場合は使えます。ただし大学が有効とする受験時期を独自に定めていることがあるため、募集要項の受験時期の指定も確認しておきましょう。
現地校に通っていればIELTSの対策は要りませんか。
リスニングやスピーキングは英語環境の中で伸びている場合がある一方、ライティングは形式が独特です。タスク2は決められた時間で意見を組み立てて書く課題で、現地の学校で書くエッセイとは長さも構成も評価の観点も違います。ここは別に対策する時間が必要になります。
1技能だけ基準に届きません。どうすればよいですか。
その技能だけを受け直せる One Skill Retake という制度があります。受けられる条件があり、受け直して下がった場合の扱いも決まっています。大学がこの制度で取得したスコアを受け付けるかどうかも、あわせて確認しましょう。
09まとめ
帰国生入試のIELTSは、必要な点数を調べる前に、スコアがどの位置に置かれているかを確かめるところから始まります。
- 出願資格・提出書類・英語試験の代替のどれに当たるかを確認する
- 必要スコアの数字だけを大学間で比べても、難しさの比較にはならない
- 技能別の下限があるなら、そちらが実質の条件になる
- 就学年数・帰国後の年数・学校の種類を先に確認して候補を絞る
- 逆算は、証明書が出願先に届く日から数える
- 現地校に通っていても、ライティングは別に対策の時間を取る
現地の学業と並行しながらどこから手を付けるか、保護者の方も一緒に整理したい場合は、高校生向けのページに進め方をまとめています。
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