日本の大学入試でIELTSのスコアが使えると聞いて調べ始めると、大学ごとに書き方が違うことに戸惑います。出願資格と書いてある大学、みなし得点と書いてある大学、加点と書いてある大学。同じスコアを持っていても、どの型で使われるかによって、必要な点数も、いつまでに取るべきかも変わります。
この記事では、国内の大学入試でIELTSが使われる3つの型を整理し、募集要項のどこを読めば自分の場合が分かるのかをまとめます。個別の大学の要件は毎年変わるため、ここで扱うのは要件の読み方のほうです。
01共通テストではなく、大学ごとの制度になっている
英語の外部検定を大学入試でどう扱うかは、大学入学共通テストで一律に定められているものではなく、各大学が個別に決めています。共通テストへ英語民間試験を組み込む構想は2019年に延期が発表され、2021年に見送りが決まりました。その結果、いま使われているのは各大学が独自に設けている制度です。
大学が独自に決めているということは、次の3つがすべて大学ごとに違うということです。
- 使い方:出願資格なのか、得点換算なのか、加点なのか
- 必要なスコア:オーバーオールだけを見るのか、技能別の下限も設けるのか
- 期限:いつからいつまでに受験したスコアが有効か。IELTSのスコアは一般に受験日から2年間が目安ですが、大学が独自の有効期間を定めていることがあります
同じ大学の中でも、学部や入試方式によって扱いが違うことがあります。「◯◯大学はIELTS 6.0から」という情報だけで判断せず、自分が出す学部・方式の募集要項を見るところから始めましょう。
02型1 出願資格として使う
比較的よく見られるのが、一定のスコアを持っていることを出願の条件にする型です。総合型選抜、学校推薦型選抜、英語外部検定を利用する特別入試、国際系の学部の入試などで使われることがあります。
この型の特徴は、基準に届いていれば出願でき、超えた分は評価されないことです。基準が6.0なら、6.0でも7.5でも出願資格の扱いは同じになります。
この型でいちばん重い制約は期限
出願資格として使う場合、締切までにスコアが手元にないと出願そのものができません。得点換算や加点なら、届かなくても他の科目で補える余地がありますが、出願資格は届かない時点で受験できなくなります。締切ではなく、その1回前の受験日から逆算しておく必要があります。
この型が使われる入試は、一般選抜より出願が早いことが多いところにも注意が要ります。総合型選抜や学校推薦型選抜は秋に出願が始まるため、高校3年生の夏までにスコアを用意しておく必要が出てきます。一般選抜だけを想定して「高校3年生の冬までに」と考えていると、間に合わないことがあります。
技能別の下限が付いている場合もあります。オーバーオール6.0以上かつ各技能5.5以上、という形です。この条件があると、平均で届いていても1技能だけ足りずに要件を満たさないことが起こります。オーバーオールだけを見て対策を進めていると、出願の直前に気づくことになります。
03型2 得点に換算して使う
IELTSのスコアを、その大学の英語科目の得点として扱う型です。みなし得点、得点換算、英語の試験を免除、といった書かれ方をします。
この型では、スコアが高いほど換算される点数も上がるのが一般的です。出願資格の型と違い、目標スコアの決め方が変わります。
| 比べる点 | 出願資格として使う | 得点に換算して使う |
| 基準を超えた分 | 評価されない | 換算点が上がることが多い |
| 目標の決め方 | 基準ちょうどを確実に超える | 換算表の段が上がる手前を狙う |
| 届かなかったとき | 出願できない | 当日の英語の試験を受ける、または低い換算点で出願する |
換算の方式は大学によって細かく違います。英語の科目の得点としてそのまま置き換える方式、満点とみなして他の科目だけで合否を決める方式、当日の英語の試験を受けたうえで高いほうを採用する方式などがあります。3つ目の方式では、スコアを持っていても当日の試験は受けることになるので、当日の時間割の見通しが変わります。
換算は段階になっていることが多く、たとえば5.5で何点、6.0で何点、6.5で満点、というように区切られます。この場合、6.4に相当する力があっても6.0の段のままなので、狙うのは段の境目です。自分の現在地が段のどこにあるかを知るために、技能別の内訳から逆算しておきましょう。
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IELTSバンドスコア計算:4技能からオーバーオールを出す
英語の試験が免除になる方式では、当日の負担そのものが減ります。試験科目が1つ減れば、その時間を他の科目に回せます。得点だけでなく、当日の科目数がどう変わるかも見ておきましょう。
04型3 加点や判定の優遇として使う
合計点に一定の点数を足す、または合否判定で優遇する型です。加点の幅は大学によって差があり、合否に直結する規模のこともあれば、同点の場合に考慮するという程度のこともあります。
この型で気をつけたいのは、加点の大きさを募集要項から読み取ることです。「英語外部検定のスコアを考慮します」とだけ書かれている場合、どれだけ影響するかは分かりません。点数として明記されていない優遇は、対策の優先順位を決める材料としては弱いと考えておくほうが安全です。
複数の検定を持っている場合の扱いも見ておきましょう。英検とIELTSの両方を持っているとき、有利なほうを選べる大学もあれば、指定された検定しか受け付けない大学もあります。両方を並行して対策すると、どちらも中途半端になりやすいので、受け付けの範囲を確認したうえで一方に絞るほうが進みます。
一方、加点の型は、届かなかったときの損失がいちばん小さい型でもあります。出願資格のように受験機会そのものを失うことがないので、他の科目の対策と並行しやすい性質があります。
05募集要項で確認する5つの項目
大学の要件は毎年見直されます。前年度の情報や、まとめサイトの一覧をそのまま信じずに、出願する年度の募集要項で次の5つを確認しましょう。
| 確認する項目 | 見落とすと何が起きるか |
| どの型で使われるか(資格・換算・加点) | 目標スコアの決め方を間違える |
| 技能別の下限があるか | オーバーオールで届いていても要件を満たさない |
| 受験時期の条件(出願日から何年以内か) | 早く取りすぎたスコアが使えない |
| 受け付けるIELTSの種類 | 提出したスコアが対象外になる |
| 証明書の提出方法と締切 | スコアはあるのに書類が間に合わない |
IELTSの種類が指定されていることがある
IELTSにはアカデミックとジェネラル・トレーニングがあり、大学入試で求められるのは通常アカデミックです。また、自宅で受験するIELTS Onlineや、かつて実施されていたIELTS Indicatorのように、受け付けの対象外とされる形式もあります。どの形式が認められるかは募集要項に書かれています。
IELTS総合対策
IELTSのアカデミックとジェネラルの違い:どちらを受けるかは何で決まるか
証明書は取り寄せに日数がかかる
スコアが出た日と、証明書が出願先に届く日は違います。原本の提出や大学への直送を求められる場合は、手続きと郵送の日数を見込んでおく必要があります。締切から逆算するときは、受験日ではなく書類が届く日から逆算しましょう。
06どの型を狙うかで、目標スコアの決め方が変わる
3つの型は、目標の立て方がそれぞれ違います。同じ「IELTSで6.0」でも、意味が変わります。
- 出願資格:基準ちょうどではなく、0.5上を目安にする。1技能の下振れで届かなくなるため
- 得点換算:換算表の段の境目を目標にする。段の途中で止まると、伸びが点数に反映されない
- 加点:加点の幅が明記されている場合だけ、点数に見合う時間を割く
複数の大学を受ける場合は、いちばん厳しい要件に合わせて1つの目標を決めるほうが、対策が分散しません。出願資格で6.0が必要な大学と、換算で6.5から満点になる大学を併願するなら、目標は6.5です。
目標を決めたら、そこから逆算して技能ごとの目標も出しておきましょう。オーバーオールは4技能の平均を0.5刻みの規則で丸めた値なので、平均がちょうど6.25になる組み合わせでも6.5が出ます。たとえば7.0・6.5・6.0・5.5なら平均は6.25で、オーバーオールは6.5です。得意な技能で7.0を取り、苦手な技能を6.0で止める組み方もできるので、全技能を同じだけ上げる必要はありません。
技能別の下限がある場合は、その技能の対策を先に始めます。多くの高校生にとって下限に引っかかりやすいのはライティングです。リーディングとリスニングは正答数で伸びが見えますが、ライティングは書いた答案を読んでもらわないと、どこで止まっているかが分かりません。
ライティング添削
IELTSライティング添削:実際の添削例と3つの受け方
07要件を調べるときにつまずきやすいところ
調べ方そのもので時間を失うことがあります。実際に相談でよく出てくるのが次の3つです。
まとめサイトの一覧を出発点にする
大学ごとの要件を一覧にしたページは便利ですが、年度が古いまま残っていることがあります。使うとしても候補を見つけるところまでにして、最終的な確認は大学が公開している募集要項で行いましょう。要項はPDFで公開されていることが多く、英語外部検定という語で検索すると該当箇所にたどり着けます。
学部ごとの違いを見落とす
同じ大学でも、国際系の学部だけがIELTSを出願資格にしていて、他の学部では加点扱い、ということがあります。大学名で情報を集めると、この違いが混ざります。調べる単位は大学ではなく、学部と入試方式です。
必要スコアだけを見て、期限を見ない
スコアの条件は覚えていても、受験時期の指定と証明書の締切は忘れがちです。この2つは、対策の期間そのものを決める条件になります。必要スコアと同じ場所にメモしておきましょう。
分からないときは大学に直接確認する
要項の書き方が曖昧で判断できないときは、入試課に問い合わせるのがいちばん早い方法です。受験生本人からの問い合わせで問題ありません。回答を得た日付と担当部署をメモしておくと、あとで条件が変わったときにも経緯が分かります。
08よくある質問
大学入試でIELTSはどのように使われますか。
出願資格として使う型、英語の得点に換算する型、合計点に加点する型の3つが中心です。どの型を採用するかは大学が個別に定めていて、同じ大学でも学部や入試方式によって扱いが違うことがあります。
共通テストでIELTSのスコアは使えますか。
大学入学共通テストに英語民間試験を組み込む構想は2019年に延期され、2021年に見送りが決まりました。現在使われているのは各大学が独自に設けている制度です。
アカデミックとジェネラル・トレーニングのどちらを受ければよいですか。
大学入試で求められるのは通常アカデミックです。ただし受け付ける形式は募集要項に書かれているので、出願する年度の要項で確認しましょう。自宅受験の形式が対象外とされることもあります。
オーバーオールで基準を超えていれば出願できますか。
技能別の下限が設けられている場合は、それも満たす必要があります。オーバーオール6.0以上かつ各技能5.5以上、といった形です。平均で届いていても1技能だけ足りないと要件を満たさないため、下限の有無は早い段階で確認しておきましょう。
いつ受けたスコアまで有効ですか。
IELTSのスコアは一般に受験日から2年間が目安ですが、大学が出願日から何年以内と別に定めていることがあります。どちらの条件も満たす必要があるので、募集要項の受験時期の指定を確認しましょう。
目標スコアはどう決めればよいですか。
型によって変わります。出願資格なら基準の0.5上、得点換算なら換算表の段の境目を目安にします。併願する場合は、いちばん厳しい要件に合わせて1つの目標を決めるほうが対策が分散しません。
スコアが出れば出願は間に合いますか。
スコアが出た日と、証明書が出願先に届く日は違います。原本の提出や大学への直送を求められる場合は、手続きと郵送の日数がかかります。締切からの逆算は、受験日ではなく書類が届く日から逆算しましょう。
09まとめ
大学入試でのIELTSの扱いは大学ごとに決まっているため、一覧表を見て終わりにせず、出願する年度の募集要項で自分の条件を確かめることが出発点になります。
- 使われ方は、出願資格・得点換算・加点の3つの型に分かれる
- 出願資格の型は、届かないと受験機会そのものを失う
- 得点換算の型は、換算表の段の境目が目標になる
- 技能別の下限があるかどうかを、早い段階で確認する
- 受験時期の条件と、IELTSの種類の指定も見る
- 締切からの逆算は、証明書が届く日から数える
要件が読めたら、次は残り時間の中でどの技能から手を付けるかを決めることになります。高校生の学習計画の組み立て方は、別の記事にまとめています。
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