海外の高校に通いながらIELTSを受ける場合、日本の高校生向けの学習計画をそのまま使うのは難しいことがあります。学年の区切りも長期休暇の時期も違い、現地の課題と成績評価が続いている中で学習時間を作ることになります。英語で生活しているのだから有利なはずなのにスコアが伸びない、という相談も少なくありません。
この記事では、現地校に通いながらIELTSを受ける方に向けて、英語で生活することで伸びる部分とIELTS用に練習が必要な部分、現地の学年暦に合わせた計画の立て方、時差や会場の確認、そして日本の大学に出願する場合の締切の扱いも含めて解説します。
01英語で生活していても、伸びる技能は限られる
現地校での生活は、たしかに英語力を押し上げます。ただし、伸びる部分とそうでない部分がはっきり分かれます。
| 技能 | 現地での生活で伸びるか | IELTSで別に必要になること |
| リスニング | 伸びやすい | 設問を先読みしながら聞く、綴りまで正確に書き取る |
| スピーキング | 伸びやすい | Part 2で2分間を一人で話しきる、Part 3で抽象度の高い質問に答える |
| リーディング | ある程度伸びる | 60分で3つのパッセージを処理する速度と、設問タイプごとの解き方 |
| ライティング | 伸びにくい | タスク1の図表の説明と、タスク2の40分での意見の組み立て |
スピーキングも、伸びやすい一方で止まりやすい場所があります。生活の中で話しているのは、目の前の相手とのやり取りです。IELTSのPart 2は、1つのトピックについて2分間を一人で話し続ける課題で、会話の相槌や質問が返ってこない状態で話を組み立てます。Part 3では、社会や教育、仕事などについて理由や背景を説明する質問にも答えます。日常の会話ではあまり出てこない種類の話題です。
とくに差が出るのはライティングです。日常のやり取りや授業への参加で書く量が増えても、IELTSのライティングは形式が独立していて、そこで求められるものは別に練習しないと身につきません。
リスニングも、聞き取れることと得点になることは別です。内容が分かっていても、答えとして書く語の綴りが違えば得点になりません。日常会話では綴りを意識する機会が少ないため、聞き取る練習とは別に、正確に書く練習も必要です。
無料ツール
IELTSスペリング練習:音声を聞いて綴る60秒ドリル
02現地校のエッセイとIELTSのタスク2は別のもの
現地校でエッセイやレポートを書き慣れている場合、その経験がそのままタスク2で通用するとは限りません。求められる条件が違うからです。
| 比べる点 | 現地校の課題 | IELTSのタスク2 |
| 時間 | 数日から数週間 | 40分 |
| 長さ | 課題によって幅がある | 250語以上 |
| 資料 | 課題によっては調べて引用する | 試験中に資料を調べることはできない |
| 評価 | 科目ごとの基準 | 4つの採点基準(課題への対応、一貫性、語彙、文法) |
もう一つ違うのが、書く前に何を思いつけるかです。タスク2では、環境、教育、都市、労働、技術といったテーマについて、その場で自分の立場と理由を組み立てます。現地校では、課題によっては資料を調べたり、時間をかけて構成を練ったりしてから書きます。IELTSでは試験中に資料を参照できないので、いくつかのテーマについて自分の意見と理由を考える練習をしておくと、試験中に考える時間を短縮できます。
いちばん大きいのは時間の差です。調べたり資料を参照したりしながら書く課題に慣れていると、40分の中で設問を読んで構成を決めて書ききる、という手順が組み立てられません。書く力はあるのに時間内に終わらない、という理由でスコアが上がらないことになります。
もう一つは、採点基準を知らないまま書いていることです。現地校での評価が高い書き方が、IELTSの4つの基準でそのまま高く評価されるとは限りません。何が評価されるのかを先に読んでおくと、練習の方向が定まります。
ライティング添削
IELTSライティング添削:実際の添削例と3つの受け方
03学年暦から計画を組む
日本の高校生向けの学習計画は、4月に始まり3月に終わる学年と、夏・冬・春の長期休暇を前提にしています。南半球の国のように学年の区切りが違う場所では、この前提が合いません。
計画を組むときは、次の順番で書き出しましょう。
- 現地の学期の区切りと長期休暇:まとまった学習時間を取れる期間が決まります
- 現地の試験と提出物が集中する時期:この期間はIELTSの学習量をゼロにする前提で考えておきます
- 日本の大学の出願時期:この締切だけは現地の暦と関係なくやってきます
書き出したうえで、まとまった時間が取れる期間を1つ選び、そこに受験日を設定します。学期の途中に受験を入れると、直前の週に課題が重なると、準備の時間が取れなくなります。休暇の後半に設定すると、学習量を増やしたうえで受けられます。
書き出してみると、現地の試験期間と日本の出願準備が重なる時期が見つかることがあります。重なりが分かっていれば、その手前に受験日を設定できます。分からないまま進むと、いちばん忙しい時期に受験日が来ます。
長期休暇に帰国する場合
休暇で日本に帰るなら、その期間に日本で受験するという選択肢もあります。IDP公式テストセンターでの受験料は、2026年7月1日時点で27,500円(税込)です。コンピューター版は複数の試験日から選べるので、滞在の日程が決まった段階で、その期間の空席を調べておきましょう。
04受験の場所と日程を先に押さえる
IELTSは多くの国と地域で実施されていますが、会場の数と実施の頻度は場所によって差があります。都市部から離れている場合、移動の時間と費用も計画に入ることになります。
受験料も国によって違います。世界共通の価格はなく、それぞれの国の運営団体が設定しています。日本より高い国も珍しくないので、どこで受けるかは費用の面でも判断材料になります。
| 確認すること | なぜ先に確認するのか |
| 最寄りの会場と実施頻度 | 受験日が月1回しかない地域では、計画の組み方が変わります |
| 受験料 | 国ごとに違うため、回数の上限を決める材料になります |
| スピーキングの日程 | 同日に実施されるか別日になるかは、国やテストセンターによって違います |
| 証明書の送付にかかる日数 | 日本の大学へ送る場合、郵送の日数を見込む必要があります |
スピーキングが別日になる場合、その日程は申し込み後に案内されることがあります。学校の授業や試験と重なる可能性があるので、確定した時点で学校側の予定と突き合わせておきましょう。なお、日本国内のIDP公式テストセンターでは、コンピューター版のスピーキングは他の3技能と同じ日に実施されます。
結果が出るまでの日数は、コンピューター版でおおむね1〜5日です。ただし、スコアが出た日と、出願先にスコアを提出できる状態になる日は違います。出願の締切から逆算するときは、受験日だけでなく、スコアが出るまでの日数と、出願先が指定する方法で提出できるようになるまでの日数まで含めて考えておきましょう。
05現地の学業とどちらを優先するか
限られた時間をどちらに使うかは、実際によく出てくる悩みです。判断の材料は、出願書類として何を提出するかにあります。
帰国生入試では、海外の学校の成績証明書などが出願書類として求められる場合があり、IELTSのスコアとともに重要な書類になります。IELTSのスコアを上げるために学校の成績を落としてしまうと、大学出願ではかえって不利になる可能性があります。
優先順位を決めるときは、次のように考えると整理できます。
- 現地の課題と試験:締切が動かせず、成績として記録に残るため、こちらを優先します
- IELTSの学習:課題を終えたあとに残る時間の中で、量を決めます
- 受験の回数:時間が足りないなら、学習量を増やすより受験の時期を後ろへ動かすほうが現実的です
受験を後ろへ動かせるかどうかは、出願の締切までに何回受けられるかで決まります。締切から逆算して、最後の受験日をあらかじめ決めておきましょう。受験日が月に1回しかない地域なら、1回目で目標のスコアに届かなかった場合の再受験まで含めて考えておく必要があります。
06日本の大学に出願する場合に見落としやすいこと
海外にいると、日本の入試制度の情報が入りにくくなります。相談の中でよく出てくる見落としは、次の3つです。
出願の時期が一般選抜より早い
帰国生入試や総合型選抜は、秋に出願が集中することがあります。一般選抜の日程を基準に考えていると、準備の時期が数か月ずれます。
スコア以外の出願条件がある
たとえば、海外での就学年数、帰国してからの経過年数、通っていた学校の種類などです。これらは努力で変えられない条件で、満たしていなければIELTSのスコアがあっても出願できません。まず確認したいのが、この3点です。
IELTS総合対策
帰国生入試でIELTSは何点必要か:募集要項の読み方と、いつまでに取るか
書類の手配に日数がかかる
現地の学校が発行する成績証明書や在学証明書は、依頼してから発行までに日数がかかります。長期休暇に入ると事務が止まる学校もあるので、休暇の前に依頼しておくと安全です。
07日本語での指導を受けるという選択
現地校に通っていると、IELTSの対策も英語で受けたほうがよいと考えがちです。ただし、採点基準の説明や、答案のどこがなぜ評価されないのかという話は、母語で受けたほうが速く理解できることがあります。
とくにライティングの指摘は、語彙や文法の正誤だけでなく、論の運び方や設問への答え方まで含みます。ここを英語で受けると、指摘の内容そのものを解釈する作業が増えます。英語で生活していても、採点基準や答案の改善方法を細かく理解するときは、日本語で説明を受けたほうが速い場合があります。
時差のある場所から受ける場合は、講義の時間だけでなく、課題の提出とフィードバックの返却がどう回るかも確認しておきましょう。やり取りが非同期であれば、時差そのものは大きな制約になりません。
08よくある質問
現地校に通っていればIELTSの対策は要りませんか。
必要です。海外で英語を使っていても、時間内に設問へ答える、指定された形式で書くといった試験固有の力は別に求められます。とくにライティングは形式が独立しているので、目標が7.0以上なら、試験形式に慣れる時間を分けて取っておきましょう。
現地校でエッセイを書いているのに、タスク2のスコアが伸びません。
条件が違うためです。現地校の課題は、数日から数週間かけて資料を調べながら書くことがありますが、タスク2は40分で、持ち込みなしで250語以上を書きます。書く力があっても、時間内に構成を決めて書ききる手順を別に練習する必要があります。
学習計画は日本の高校生向けのものを使えますか。
そのままでは合わないことがあります。学年の区切りと長期休暇の時期が違うためです。現地の学期の区切り、試験と提出物が集中する時期、日本の大学の出願時期を書き出してから、まとまった学習時間を取れる期間を決めましょう。
帰国したときに日本で受験してもよいですか。
問題ありません。IDP公式テストセンターでの受験料は、2026年7月1日時点で27,500円(税込)です。コンピューター版は複数の試験日から選べるので、滞在の日程が決まった段階で、その期間の空席を調べておきましょう。
現地の勉強とIELTS、どちらを優先すべきですか。
帰国生入試では海外の学校の成績証明書も出願書類として求められる場合が多く、IELTSのために学校の成績を落とすと出願で不利になることがあります。現地の課題と試験を優先し、そのうえでIELTSに使える時間を決めたほうが、学校の成績とIELTSの両方を維持しやすくなります。
受験する国によって何が変わりますか。
受験料と、会場の数や実施の頻度が変わります。世界共通の価格はなく、それぞれの国の運営団体が設定しています。受験日が限られている地域では、計画の組み方そのものが変わるので、先に調べておきましょう。
出願の締切からどう逆算すればよいですか。
受験日だけを見るのではなく、スコアが出る日と、出願先にスコアを提出できる状態になるまでの日数まで含めて考えます。結果が出るまではコンピューター版でおおむね1〜5日ですが、そこから成績の提出にかかる日数が加わります。海外から日本へ郵送する場合は、その日数も見込んでおきましょう。
09まとめ
海外の高校に通いながらIELTSを受けるなら、英語の勉強だけでなく、学校の予定と試験日をどう組み合わせるかが重要になります。
- 英語で生活していても、IELTSの形式まで自然に身につくわけではない
- 現地校のエッセイとタスク2は、時間・長さ・資料・評価の条件が違う
- 現地の学年暦、試験の時期、日本の出願時期を確認してから受験日を決める
- 締切からの逆算は、スコアが出る日だけでなく、成績の提出方法と期限まで確認する
時差のある場所から受講する場合の進め方は、こちらのページで詳しく紹介しています。
オンライン
オンラインでのIELTS対策