スキミングとスキャニングという言葉は、IELTSの対策を始めるとすぐに出てきます。ただ、どちらも「速く読む方法」として説明されることが多く、実際に目で何を追えばよいのかまでは書かれていません。この記事では、2つの読み方で追うものを具体的に示し、そのうえで、どちらも使わずに1文ずつ読んだほうがよい場面まで整理します。時間配分そのものについては別の記事で扱っているので、ここでは目の動かし方に絞ります。
目次
2つは速さではなく目的が違う
スキミングで追うのは段落の1文目と論理マーカー
スキャニングで探すのは形が目立つ語
よくある3つの誤解
1文ずつ読んだほうがよい場面
2つを切り替える練習のしかた
よくある質問
まとめ
01 2つは速さではなく目的が違う
スキミングは文章全体が何の話かをつかむための読み方、スキャニングは決まった情報がどこにあるかを探すための読み方です。どちらも結果として速くはなりますが、速く読むこと自体が目的ではありません。
スキミング スキャニング
何のために 話の流れと各段落の役割をつかむ 設問に対応する箇所を見つける
何を追うか 段落の1文目、論理マーカー 数字、大文字で始まる語、記号
読む量 各段落の一部 探している語の周辺だけ
使う場面 本文に入る前 設問を読んだあと
時間の目安(練習用) 1つのパッセージで2分から3分 1問につき数十秒
基本的には、先にスキミングで全体をつかみ、設問を読んでからスキャニングで該当箇所に戻る進め方が使いやすいでしょう。設問を読む前に本文を細かく読むと、覚えていられない情報にまで時間を使うことになります。ただし、設問タイプによっては先に設問を確認したほうが早いこともあるので、この順番を固定のルールとして考える必要はありません。
02 スキミングで追うのは段落の1文目と論理マーカー
スキミングは、飛ばし読みとは違います。読む場所を先に決めておきます。この記事では、その入口として「段落の1文目」と「論理マーカーの前後」の2つを使います。however や as a result のような語の前後です。
本文
Urban beekeeping has grown rapidly in several European cities over the past decade. Rooftop hives are now found on hotels, schools and even hospitals. Supporters argue that the practice raises public awareness of pollinator decline.
However, some ecologists question whether the trend benefits wild bees. A dense population of honeybees competes for the same limited supply of urban flowers, and studies in Paris and London have reported lower numbers of solitary bee species in areas with many hives.
この2段落をスキミングするとき、目で追うのは Urban beekeeping has grown rapidly … と However, some ecologists question … の2文です。この2文だけで、1段落目が広がりの紹介、2段落目が反論だとわかります。studies in Paris and London という細部は、設問で必要になったときに戻れば足ります。
論理マーカーの前後を見るのは、話の向きが変わる場所だからです。上の例の However は、1段落目の「支持する立場」から2段落目の「疑問を投げかける立場」への切り替えを示しています。ここを拾っておくと、Matching Headings のように段落の役割を問う設問で迷いません。
反対に、for example や in addition のように話の向きが変わらないマーカーは、スキミングの段階では飛ばして構いません。目で追うのは、however、although、as a result、in contrast のように、前後で内容が変わるものだけです。
段落の1文目が話題を示していないとき
段落によっては、1文目が前の段落の続きになっていて、話題が2文目に出てくることがあります。1文目が This shift や Such findings のような指示語で始まっていたら、2文目まで読みます。指示語で始まる文は、それ自体では新しい情報を持っていません。
リーディング
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03 スキャニングで探すのは形が目立つ語
スキャニングでは、意味ではなく形で探します。ページの上から視線を落としながら、次のようなものを拾います。
数字と年号。1970s、42 per cent、1,200 のような形
大文字で始まる語。地名、人名、組織名
記号を伴う語。パーセント、通貨、括弧の中
言い換えられにくく、本文中で見つけやすい専門用語。pollinator、photosynthesis など
これらは形が目立つので、意味を読まなくても目に留まります。設問に Paris や 1,200 が出てきたら、本文中の同じ形を探すだけで場所が決まります。
設問の語がそのまま本文に出てくるとは限らない
探す語の選び方には注意が要ります。設問の中心的な語は、本文では言い換えられていることがほとんどです。 設問:the cost of maintaining hives 本文:keeping a hive is not cheap この場合、cost で探しても見つかりません。言い換えられにくいのは、数字・固有名詞・専門用語です。スキャニングで探す語は、この3つから選びましょう。
コンピューターで受験する場合、本文全体を一目で見渡せないことがあります。段落の位置を、上のほう、中ほど、下のほうという程度に覚えておくと、戻る回数が減ります。
リーディング
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04 よくある3つの誤解
この2つの読み方は、やり方を誤解したまま練習を続けても効果が出ません。よく見かける3つを挙げます。
4-1 スキミングを、全体を速く読むことだと思う
ページ全体に目を通しながら速度だけを上げると、内容が残らないまま時間だけが過ぎます。スキミングは、読む場所を減らす読み方です。速度を上げるのではなく、読まない場所を決めます。
目安として、スキミングで読む量は本文全体の3割ほどです。8段落のパッセージなら、読むのは各段落の1文目と、論理マーカーを含む数文だけになります。全体に目を通したうえで速度を上げる読み方とは、そもそも動きが違います。
4-2 スキャニングだけで解こうとする
設問の語を本文で見つけて、その1文だけを読んで答えを決めると、前後の否定や条件を落とします。まずは見つけた箇所の前後1文まで読み、意味が完結していなければさらに範囲を広げます。とくに not、unlike、only といった語は、答えを反対側にひっくり返します。
4-3 本文を読む前に設問を全部覚えようとする
設問を先に読むのは有効ですが、10問すべてを頭に入れてから本文を読む必要はありません。2問か3問ずつ区切って本文に戻るほうが確実です。設問には後で戻るための印を付けられるので、迷った問題を残したまま先へ進めます。
05 1文ずつ読んだほうがよい場面
2つの読み方で足りない場面があります。設問のタイプによっては、該当箇所を見つけたあとに1文ずつ正確に読む必要が出ます。
設問タイプ 読み方 理由
True・False・Not Given 該当箇所を1文ずつ読む 本文と設問文が矛盾するかどうかを判断するため、範囲や程度のずれまで見る必要がある
Yes・No・Not Given 同上 筆者の主張か、紹介されている他者の意見かを見分ける必要がある
Matching Headings 段落ごとにスキミング 段落全体の役割を問うので、細部を読むと迷いが増える
穴埋め スキャニングののち周辺を精読 指定語数と品詞が合っているかを確かめる
Matching Headings だけは、他とは逆の性質を持っています。段落の細部を読むほど、どの見出しにも当てはまるように見えて迷いが増えます。段落の1文目を軸に、必要なら最後の1文まで確認して、役割を1語で決めるほうが早く片づきます。
速く読むことが目的になると、本来なら1文ずつ読むべき場面まで飛ばしてしまいます。読み方の切り替えは、設問のタイプを見た時点で決めておきましょう。
ジェネラルの前半では比率が変わる
ジェネラル・トレーニングの前半は、広告や案内文のような短い文書が複数並びます。ここには段落の1文目で流れをつかむような構造がないので、スキミングの出番は小さくなり、見出しと項目を目印にしたスキャニングが中心になります。反対に、最後の長文はアカデミックのパッセージと同じ読み方で進めます。同じ試験の中でも、前半と後半で使う読み方の比率が変わることになります。
リーディング
False と Not Given の違い:本文と矛盾するか、何も書かれていないか
06 2つを切り替える練習のしかた
読み方は、解きながら身につけるより、切り離して練習したほうが早く固まります。1日15分あれば足ります。
ステップ すること 時間
1 設問を見ずに本文だけを開き、各段落の役割を1語ずつ書き出す 3分
2 書き出した内容を、答えを見て確認する 2分
3 設問を3問読み、探す語を先に決めてから本文に戻る 5分
4 見つけた箇所の前後1文まで読み、足りなければ広げて解答する 5分
この練習で使う本文は、解いたことのある問題のもので構いません。むしろ、内容を一度読んでいるほうが、段落の役割を書き出す作業に集中できます。新しい問題を使うと、内容を理解することに気を取られて、読み方の練習になりません。
ステップ1で書く1語は、内容の要約ではなく役割です。紹介、反論、事例、結論のように書きます。段落の役割がつかめていれば、設問に戻ったときに探す場所が絞れます。
ステップ3で決める語は、数字・固有名詞・専門用語から選びます。ここで一般的な語を選んでしまうと、本文のあちこちに出てきて探せません。時間配分そのものは、次の記事で扱っています。
リーディング
IELTSリーディング60分の時間配分と読み方の切り替え:3種類の読み方の使い分けと撤退の目安
07 よくある質問
スキミングとスキャニングはどう違いますか。
目的が違います。スキミングは文章全体が何の話かをつかむために段落の1文目と論理マーカーを追う読み方、スキャニングは設問に対応する箇所を見つけるために数字や固有名詞を探す読み方です。どちらも速く読むこと自体が目的ではありません。
本文と設問はどちらを先に読むべきですか。
本文を先にスキミングして全体をつかんでから設問に進む方法が使いやすいでしょう。そのあと、設問のキーワードを手がかりにスキャニングで本文に戻ります。設問を読む前に本文を細かく読むと、必要のない情報にまで時間を使うことになります。ただし、設問タイプによっては先に設問を確認するほうが効率的な場合もあります。
スキミングは1つのパッセージに何分かけてよいですか。
公式の基準があるわけではありませんが、練習では2分から3分に収めるところから始めるとよいでしょう。この時間で各段落の役割がつかめていれば、設問に戻ったときに探す場所が絞れます。5分以上かかっている場合は、読む場所を減らしきれていない可能性があります。
設問の語で本文を探しても見つかりません。
設問の中心的な語は、本文では言い換えられていることがほとんどです。探す語は、言い換えられにくい数字・固有名詞・専門用語から選びましょう。cost や increase のような一般的な語で探すと見つかりません。
見つけた1文だけを読んで解答してもよいですか。
まずは前後1文まで読み、意味が完結していなければさらに前後を確認します。not、unlike、only のような語が前後にあると、答えが反対側になります。見つけた箇所だけで判断すると、条件や範囲の限定を落とします。
True・False・Not Given でもスキャニングだけで解けますか。
解けません。この形式は本文と設問文が矛盾するかどうかを判断するもので、範囲や程度のずれまで見る必要があります。該当箇所を見つけたあとは、1文ずつ正確に読みます。
設問は最初に全部読んでおくべきですか。
2問か3問ずつ区切って本文に戻るほうが確実です。10問すべてを頭に入れてから読み始めると、探すものが多すぎて結局読み直すことになります。迷った問題には印を付けて先へ進めます。
速く読む練習をしたほうがよいですか。
読む速度を上げるより、読まない場所を決めるほうが先に結果につながります。スキミングは読む場所を減らす読み方で、速度を上げる読み方ではありません。段落の役割を1語で書き出す練習から始めるとよいでしょう。
08 まとめ
スキミングは全体の流れをつかむため、スキャニングは該当箇所を探すため。速さは結果であって目的ではない
スキミングで追うのは段落の1文目と論理マーカー。指示語で始まる段落は2文目まで読む
スキャニングで探すのは数字・固有名詞・専門用語。一般的な語は言い換えられていて見つからない
見つけた箇所は、まず前後1文まで読み、必要ならさらに広げる。not や only で答えが反対になる
True・False・Not Given のように、1文ずつ読むべき設問タイプがある
練習では、設問を見ずに段落の役割を1語で書き出すところから始める
次に問題を解くときは、本文に入る前の2分で、各段落の役割を1語ずつ書き出してみましょう。そのメモがあるだけで、設問に戻ったときの迷いが減ります。