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ライティング・タスク2

日本の常識は世界の非常識?ライティング・タスク2で「日本基準」のまま書いていないか確認する

執筆:高橋 響 公開日:

エッセイのアイデアを考えるとき、宿題や残業、終身雇用といった身近な話題ほど、つい日本での経験や感覚をそのまま土台にしてしまいがちです。もちろんそれでもエッセイとしては十分に成立しますが、海外での生活や学習を視野に入れているなら、この機会に世界的な視点も取り入れておきたいところです。

この記事では、日本では当たり前に見える前提が、実は世界的には当たり前ではないという例を取り上げながら、ライティング・タスク2のアイデア出しで視点を広げるための考え方を整理します。

01なぜエッセイは「日本の常識」に寄りやすいのか

ライティング・タスク2で扱われるタスクの多くは、教育、仕事、社会制度といった、誰もが日常生活の中で接している話題です。アイデアを考えるとき、自分の経験や身の回りで見聞きしたことを土台にするのは効果的な戦略で、それ自体は間違っていません。

ただ、その経験のほとんどが日本国内で得られたものである場合、自分にとっての当たり前が、そのまま世界の当たり前だという前提でエッセイを書いてしまうことがあります。宿題や残業、終身雇用のような話題は、日本での生活を送っていると疑う機会が少なく、当然の前提として扱われがちです。

要点

IELTSでは、日本の事例を使うこと自体が問題になるわけではありません。重要なのは、その事例が設問に対する主張を適切に支えているか、そして一つの国の事情を必要以上に一般化していないかという点です。

日本の事情を根拠にエッセイを書くこと自体は問題ありません。ある国だけの慣習を、その国の一例としてではなく無条件に一般的な事実として扱ってしまうと、根拠の一般化のしかたに無理が出てきます。次の2文を比べてみましょう。

In Japan, many students are given homework after school. This can help them review what they have learned in class.日本という一つの社会の状況を具体例として示し、そこから得られる効果を説明している

Japanese students have to do homework, so children in all countries need homework.日本の状況を、根拠なしにすべての国に当てはめる主張へと飛躍させている

前者は日本の状況を一つの例として提示しているだけなので、根拠として無理がありません。後者は同じ日本の状況から出発していながら、それを世界共通の結論にすり替えてしまっています。日本の事例を使わないことではなく、日本の事例を世界一般の事実として扱わないことが、ここでのポイントです。具体的にどのような話題で前提がずれやすいのか、実際のタスクを見ながら確認していきましょう。

02宿題の量や位置づけは世界共通ではない

宿題というテーマは、タスクの中でもよく扱われます。プラスワンポイントのIELTS学習アプリ『タスク検索』に収録されているタスクの一つに、次のようなものがあります。

タスクの例

Many countries think that children have to do homework in their free time while others say children should do more outdoor activities. To what extent do you agree or disagree?

このタスクは「宿題をする国」と「外遊びを重視する国」を対比する形になっており、宿題が存在すること自体を前提とはしていません。この構造に助けられて、宿題のあり方は国によって幅があるという視点に自然と気づける場合もありますが、日本の学校生活を土台にアイデアを考えると、宿題は当然存在するものという前提のままエッセイを進めてしまうことがあります。

宿題の量や位置づけは、教育制度によって幅があると言われています。宿題の是非を論じるエッセイでは、宿題は生徒の学習を補強する目的で課されることが多いものの、その量や重視のされ方は教育制度によって大きく異なる、という一文を添えるだけで、議論の土台が一段広がります。

03自由時間の過ごし方も、国によって前提が違う

自由時間の過ごし方も、日本での感覚をそのまま持ち込みやすい話題です。次のようなタスクがあります。

タスクの例

Some people think that activities during free time should be planned while others disagree. Discuss both sides and include examples and relevant data from your own experience.

このタスクで問われているのは、自由時間の活動を計画的に過ごすべきかどうかです。日本では、休日や自由時間についても「有効に使うこと」が重視される場合があり、そのため自由時間の一部を仕事や勉強の続きに充てることが、計画的に過ごすべきだという側の理由として頭に浮かびやすいところがあります。持ち帰った仕事を自宅で片付けたり、休日にメールを確認したりすることが、特別な出来事ではなく日常の一部として組み込まれている場合、それを前提にアイデアを組み立ててしまいがちです。

仕事と私生活の境界の引き方は、国や職場の文化によって差があるとされています。休暇中は業務の連絡を控える慣行を明文化している国もあると言われており、自由時間の過ごし方を論じるエッセイでは、仕事を持ち帰ることを前提に計画性を主張する立場もあれば、業務から完全に切り離された時間だからこそ計画にとらわれるべきではないという立場もあるという形で両方の状況に触れられると、一つの国の状況だけを前提にした主張よりも幅が出ます。

04終身雇用が薄れても、解雇のルールは日本と大きく違う

終身雇用は、日本でも近年は前提として語りにくくなってきた慣行です。次のようなタスクで扱われることがあります。

タスクの例

Nowadays employment options are changing and employees cannot rely on having the same job and working conditions throughout their life. What are some possible causes? Suggest some ways to plan for the future under these circumstances.

ここで問われているのは、同じ職に長く留まれなくなった原因と、その状況への備え方です。終身雇用が薄れてきたこと自体は日本でもよく話題になるので比較的書きやすいのですが、それとは別の軸として、解雇のしやすさという制度面の違いがあります。日本では、正当な理由のない解雇は法律上難しいとされており、終身雇用という慣行が薄れたあとも、この解雇の難しさは大きくは変わっていません。一方で、雇用契約が比較的容易に終了できるとされる国もあり、雇用の安定性の中身そのものが国によって異なると言われています。

日本の一般的な状況論点
終身雇用の慣行近年は薄れつつある同じ会社に長く勤め続けることが前提とされてきたかどうか
解雇のしやすさ(制度面)正当な理由のない解雇が難しいとされる雇用契約を終了させる条件がどれだけ厳格か

終身雇用があるかどうかと、解雇がしやすいかどうかは、別の軸の話です。job security(雇用の安定性)を論じるタスクでは、どちらの軸について書いているのかを意識して整理すると、議論がぶれにくくなります。

05残業を断れるかどうかも、国によって大きく異なる

残業についても、日本の働き方を土台に考えやすい話題です。次のようなタスクがあります。

タスクの例

Although countries with long average working hours are economically successful, this often has some negative social consequences. To what extent do you agree or disagree?

日本の残業には、36協定と呼ばれる労使協定に基づいて時間の上限などが定められる仕組みがありますが、実際には従業員の側から残業を断りにくい状況があります。一方、国や業界によっては、所定労働時間と時間外労働の区別が比較的明確で、勤務時間外の業務連絡や対応を制限する制度や慣行が定着している場合もあります。残業を断りやすいかどうかの度合いは、国や業界によって大きく異なります。

残業や長時間労働を論じるエッセイでは、どの国や業界を念頭に置いているのかを一言添えるだけで、一つの働き方だけを前提にした主張になりにくくなります。

06教室・職場の掃除も、日本で比較的よく見られる慣習の一つ

清掃の分担も、日本の学校や職場での経験がそのまま前提になりやすい例の一つです。日本では、生徒が自分の教室を掃除したり、社員が持ち回りでオフィスの清掃を担当したりする慣習が広く見られます。しかし、清掃を専門のスタッフに任せる社会も少なくないと言われており、生徒や社員自身が掃除を担当することは、世界的に見て当然の前提というわけではないようです。

清掃の分担そのものを直接問うタスクは多くありませんが、誰が責任を持つべきかという枠組みは、他の話題でも繰り返し出てきます。次のようなタスクが、その一例です。

タスクの例

Some people believe that residents are responsible for keeping the streets clean and tidy, while others believe that this is the responsibility of the government. Discuss both views and give your own opinion.

このタスクは街路の清掃についての設問ですが、教室や職場の清掃にも同じ枠組みを応用できます。住民が担うべきか、行政が担うべきかという対立を、生徒や社員が担うべきか、専門のスタッフが担うべきかという形に置き換えれば、responsibility(責任の所在)を論じる別のタスクにも使える視点になります。

07日本基準に寄せすぎずに書くための工夫

宿題、自由時間の過ごし方、雇用の安定性、残業、清掃の分担について、日本でよく前提とされる状況をまとめると、次のようになります。

話題日本でよく前提とされる状況触れておきたい視点
宿題学校生活の一部として広く定着している量や位置づけは教育制度によって幅がある
自由時間仕事や勉強の続きに充てることが日常に組み込まれやすい私生活との境界の引き方は社会によって異なる
雇用の安定性終身雇用は薄れつつあるが、解雇は法律上難しいとされる終身雇用の有無と解雇のしやすさは別の軸
残業断りにくい状況がある断りやすさの度合いは国や業界で大きく異なる
清掃の分担生徒や社員自身が担うことが多い専門スタッフが担う社会も少なくない

アイデアを考える段階で、この一覧にあるような、日本ではこうだが他の社会ではどうだろうかという問いを一つ挟むだけで、根拠の一般化のしかたに幅が出てきます。自分の経験を使うこと自体は悪いことではなく、むしろ具体性のある根拠として機能します。ただし、それを日本ではこうだがという一つの例として位置づけるか、世界的にこうだという前提として扱うかで、エッセイの説得力は変わってきます。

採点基準(Band Descriptors)のTask Responseの観点で見られているのは、世界的な視点そのものではなく、設問に対する立場・理由・具体例がどれだけ十分に展開されているかです。日本の事例だけで書いた答案でも、その事例が主張をきちんと支えていれば高いバンドを狙えます。一方で、日本での経験を無条件に世界共通の前提として扱ってしまうと根拠の一般化に無理が出て、その部分の説得力が弱くなります。

IELTS学習アプリ タスク検索 ライティング・タスク2の収録タスクをキーワードで検索できます。この記事で紹介したタスクも、このアプリから探したものです。 ライティング・タスク2 ライティング・タスク2 採点基準表(Band Descriptors):2023年5月改訂で何が変わったのか

08よくある質問

日本での経験をもとにエッセイを書くのは避けたほうがよいですか。

避ける必要はありません。自分の経験には具体性があり、説得力のある根拠として十分に使えます。宿題や残業の話題であれば、日本の状況を世界共通の前提としてではなく、日本ではこうだがという一つの例として示すと、根拠の幅が広がります。

宿題があることを前提に書いてしまいましたが、間違いですか。

誤りとまでは言えません。宿題を扱うタスクの中には、宿題の有無自体を対比するものもあり、宿題の量や位置づけは教育制度によって幅があるという視点を一文添えるだけで、議論の土台が広がります。

終身雇用と解雇のしやすさは同じ話ですか。

別の軸の話です。終身雇用は同じ会社に長く勤め続けることが前提とされてきたかどうかを指し、解雇のしやすさは雇用契約を終了させる条件の厳しさを指します。日本では終身雇用が薄れつつある一方で、正当な理由のない解雇は法律上難しいとされています。

残業を断れるかどうかは、本当に国によって違うのですか。

国や業界によって大きく異なります。日本では36協定に基づく仕組みがある一方で、従業員の側から残業を断りにくい状況があります。一方、勤務時間外の業務連絡や対応を制度として制限している国や業界もあり、どの社会を念頭に置くかで断りやすさの度合いは変わってきます。

教室や職場の掃除を扱うタスクはありますか。

清掃の分担そのものを直接問うタスクは多くありませんが、住民と行政のどちらが街路の清掃に責任を持つべきかのように責任の所在を問うタスクは出題されます。同じ枠組みを教室や職場の清掃に置き換えて考えることができます。

日本の事例だけで書いても、評価は下がりませんか。

下がるとは限りません。採点基準のTask Responseで見られているのは、設問に対する立場・理由・具体例がどれだけ展開されているかです。日本の事例であっても、それが主張を適切に支えていれば評価されます。評価が下がりやすいのは、日本の状況を根拠なく世界共通の前提として扱ってしまう場合です。

海外の実情を詳しく知らなくても、世界的な視点を書けますか。

詳しい実情を知らなくても、日本ではこうだが異なる状況の社会もあり得るという形で前提に幅を持たせるだけで、一つの国の状況だけを前提にした主張になることを避けられます。

どの話題で前提を疑えばよいか、判断の目安はありますか。

教育、仕事、社会制度など、自分の日常生活と結びつきの強い話題ほど、日本での経験が無意識の前提になりやすいと言えます。宿題や残業のように、当たり前すぎて疑う機会が少なかった話題ほど、一度立ち止まって確認する価値があります。

09まとめ

日本の常識をもとにエッセイを組み立てること自体は間違いではなく、具体性のある根拠として十分に機能します。日本の事例を使わないことが重要なのではなく、その事例を世界共通の前提としてではなく一つの例として位置づけることが重要です。宿題、自由時間の過ごし方、雇用の安定性、残業、清掃の分担といった身近な話題ほど、日本での経験が無意識の前提になりやすいというのも事実です。

  • 宿題の量や位置づけは世界共通ではなく、教育制度によって幅がある
  • 自由時間の使い方や私生活との境界の引き方は、社会によって前提が異なる
  • 終身雇用の有無と解雇のしやすさは別の軸の話
  • 残業を断れるかどうかは国や業界によって大きく異なる
  • 教室や職場の清掃を誰が担うかも、日本で比較的よく見られる慣習の一つ

海外での生活や学習を視野に入れているなら、日本基準を切り捨てるのではなく、一つの例として相対化しながらアイデアを組み立ててみましょう。

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Hibiki Takahashi

この記事を書いた人

Hibiki Takahashi

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象にIELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住14年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

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