能力という日本語には単数も複数もないため、ability と abilities のどちらを書くかは日本語からは決まりません。Parents have limited ability to teach a wide range of subjects. と Parents have limited abilities to teach ... は、どちらも文の形としては成り立ちますが、自然なのは前者です。
判断の分かれ目は、ひとまとまりの能力として述べているのか、個別の能力を並べているのかという点にあります。この記事では、不可算と可算の使い分けを軸に、the ability to do の冠詞、able との品詞の違い、答案で形を落としやすいところまで整理します。
目次
結論:ひとまとまりの能力か、個別の能力か
不可算の ability:能力を量として捉える
可算の abilities:個別の能力を並べる
the ability to do の冠詞をどうするか
able との違いと、形を落としやすいところ
capability・capacity・skill との使い分け
ライティング・タスク2とスピーキングでの使い方
よくある質問
まとめ
01 結論:ひとまとまりの能力か、個別の能力か
ability は、意味によって不可算名詞としても可算名詞としても使われる語です。どちらでも自由に選べるわけではなく、能力をひとまとまりのものとして述べているか、輪郭のある個別の能力として並べているかで決まります。
使い分けの軸
ability(不可算):ひとまとまりの能力。どこまでできるかという程度に目を向けている
abilities(可算・複数):個別の能力。何ができるかを数え上げている
観点 ability(不可算) abilities(可算)
捉え方 量や程度 種類や項目
付きやすい語 limited、great、considerable diverse、different、various
典型の形 the ability to do、limited ability their abilities、a range of abilities
答えている問い どこまでできるか 何ができるか
冒頭の例で考えてみます。Parents have limited ability to teach a wide range of subjects. は、幅広い科目を教えるというひとつの包括的な能力について、その程度が限られていると述べています。ここを abilities にすると、個別の能力をいくつも数え上げている読み方になり、続く a wide range of subjects と噛み合いません。
逆に、教師が持っている力を項目として並べるのであれば複数形になります。Professional teachers possess diverse abilities in pedagogy, classroom management, and subject-specific expertise. は、教育法、教室管理、科目の専門知識という別々の能力を数え上げているので abilities が自然です。
ライティング・タスク2
development は数えられる?抽象名詞の可算・不可算の揺れ
概念なら不可算、個別の事例なら可算という原理は ability に限りません。他の抽象名詞での揺れ方は上の記事にまとめてあります。
02 不可算の ability:能力を量として捉える
不可算で使うときの ability は、能力を分けられない量として捉えています。冠詞も複数形も付けず、形容詞だけを添える形が基本です。
Parents have limited ability to teach a wide range of subjects.
親が幅広い科目を教える能力は限られています(程度の話をしている)
She is a writer of great ability.
彼女は優れた能力を持つ書き手です
Students of similar ability are placed in the same group.
同程度の能力の生徒が同じグループに入ります
3つとも、能力を何種類持っているかではなく、どのくらいあるかを述べています。limited、great、similar のように程度を表す形容詞と組むのが、不可算で使うときの目印です。
ある分野での力を言うときも不可算になりやすい
ability in、ability at のように前置詞を続けて、どの分野の力かを示すこともできます。この形も、その分野での力をひとまとまりとして捉えているので不可算です。
He showed remarkable ability in mathematics from an early age.
彼は幼いころから数学で並外れた力を示しました
03 可算の abilities:個別の能力を並べる
複数形の abilities は、輪郭のある能力を数え上げるときに使います。何ができるのかを項目として示す形なので、種類の多さを表す形容詞と組みます。
Professional teachers possess diverse abilities in pedagogy and classroom management.
専門教師は教育法や教室管理において多様な能力を持っています(別々の能力を並べている)
The programme is designed for children with different abilities.
その課程は異なる能力を持つ子どもたちのために作られています
Teachers undergo years of training to develop these abilities.
教師はこうした能力を養うために何年もの訓練を受けます
diverse、different、various、a range of のように種類を示す語が付いたら複数形と考えて差し支えありません。逆に limited abilities と書くと、持っている能力の範囲が限られているという意味になり、単に程度を述べたい場合とは焦点が変わります。
○
Parents have limited ability to teach advanced subjects.教える力の程度が限られている
△
Parents have limited abilities to teach advanced subjects.文としては成立するが、持っている能力の範囲が限られているという読みになる
所有格が付く場合も、何を述べたいかで決まります。his ability は彼の力の程度、his abilities は彼が持っている個々の能力を指します。人物を評価する文脈では複数形のほうがよく使われます。
04 the ability to do の冠詞をどうするか
ability に to不定詞を続けて「〜する能力」と言うとき、いちばん使われる形は the ability to do です。to不定詞がうしろから内容を限定し、どの能力を指しているのかが決まるため、定冠詞が付きます。
Technology has given people the ability to work from anywhere.
技術は人々にどこからでも働ける能力を与えました
The ability to think critically is essential in higher education.
批判的に考える力は高等教育で欠かせません
いっぽう、形容詞が付いて程度を述べる場合は冠詞を付けません。limited ability to、little ability to のような形です。冠詞の有無で意味が変わるわけではなく、程度を言うのか特定の能力を名指しするのかという焦点の違いが形に出ます。
形 使う場面 例
the ability to do to不定詞で内容が限定される the ability to think critically
形容詞 + ability to do その能力の程度を述べる limited ability to teach
an ability to do ある一つの能力として取り出す an ability to work under pressure
an ability to do も誤りではありませんが、the ability to do と比べると使われる場面は限られます。答案では、to不定詞で能力の内容を示すなら the、程度を述べるなら冠詞なしで形容詞を添える、と決めておくと迷いません。
05 able との違いと、形を落としやすいところ
ability は名詞、able は形容詞です。品詞が違うので、文の中で置き換えることはできません。日本語ではどちらも「できる」に対応するため、混ぜてしまう答案が出ます。
○
Students are able to access the library online.形容詞なので be動詞のあとに来る
○
Students have the ability to access the library online.名詞なので have の目的語になる
✗
Students are ability to access the library online.名詞を形容詞の位置に入れている
ability of doing とは書かない
「〜する能力」を表す場合は ability to do が基本です。ability of doing という形は通常使われません。前置詞の of を使うのは、the ability of the government のように能力を持っている側を示すときです。
✗
the ability of solving complex problems「〜する能力」の意味では通常使わない形
○
the ability to solve complex problemsto不定詞を続ける
○
the ability of young children to learn languagesof は能力を持っている側を示している
この of の形でつまずきやすいのは、能力を持っている側を示したあとで動名詞に切り替えてしまうことです。of + 人 のあとに続くのも to不定詞です。
✗
the ability of people solving problemsof + 人 のあとに動名詞は続かない
○
the ability of people to solve problemsof で持ち主を示し、to不定詞で内容を示す
of は誰の能力かを示すだけで、何をする能力かは to不定詞が担っています。役割が別なので、両方を1つの名詞句に並べられます。
否定形は inability と disability を取り違えない
できないことを名詞で言うときは inability です。the inability to do の形で使います。disability は身体や精神の障がいを指す語なので、単に能力が足りないという意味では使いません。
His inability to manage time affected his results.
時間を管理できないことが彼の成績に影響しました
06 capability・capacity・skill との使い分け
ability の近くには意味の似た名詞がいくつかあります。答案で言い換えたいときは、何に焦点があるかで選びます。
語 焦点 典型の形
ability 実際にできること the ability to do
capability 備わっている力、設備や組織の性能 the capability to do、military capability
capacity 受け入れられる量、潜在的な許容力 the capacity for、production capacity
skill 訓練で身につけた技能 communication skills、skills in
skill は訓練で身につくものなので、教育や職業の話と相性があります。communication skills、problem-solving skills のように複数形で使うのが普通です。ability は生まれつきの力にも訓練で得た力にも使えるので、より広く使えます。
言い換えは機械的に置き換えられるものではありません。人や組織が何かを実行できる力を強調するなら capability が使えますが、communication ability を communication capability、natural ability を natural capability と置き換えると不自然になります。skill の代わりにもなりません。
言い換えの例
Employers value the ability to work in a team.チームで働けること自体に焦点がある
Employers value teamwork skills.訓練で身につく技能として捉えている
The hospital has reached its capacity.受け入れられる量の話。ability では言い換えられない
capacity は容量の意味が強いので、能力の言い換えとして機械的に置き換えると意味がずれます。言い換えを選ぶときは、訓練で身につけた技能なら skill、実行できる力そのものなら capability、というように、何を指しているかを先に決めるとよいでしょう。
IELTS学習アプリ
コロケーション検索
語と語の自然な組み合わせを検索できます。ability と abilities のどちらにどんな形容詞が付くかを確かめられます。
07 ライティング・タスク2とスピーキングでの使い方
ライティング・タスク2で ability が出てくるのは、教育や雇用のトピックで、何ができるかを論じる場面です。一般論として能力の程度を述べるなら不可算、具体的な能力を並べるなら複数形、という切り替えがそのまま使えます。
While homeschooling offers flexibility, parents typically have limited ability to provide expert instruction across all academic subjects.
ホームスクーリングには柔軟性がありますが、親がすべての科目で専門的な指導を行える程度は通常限られています
Professional teachers possess diverse abilities that most parents lack, which makes traditional schooling more effective.
専門教師は多くの親が持たない多様な能力を備えており、それが伝統的な学校教育をより有効なものにしています
1文目は程度の話なので limited ability、2文目は種類の話なので diverse abilities です。同じ段落の中で切り替わっても問題ありません。どちらを述べているかが読み手に伝わることのほうが大事です。
スピーキングでは the ability to do が使いやすい
スピーキングで意見を述べるとき、the ability to do は理由づけの型として使えます。one teacher has the ability to make history engaging のように、具体的に何ができるのかを続けられるからです。
Professional teachers have specialised abilities in different areas. For example, one teacher might have the ability to make history engaging.
専門教師は分野ごとに専門的な能力を持っています。たとえば、歴史を面白くする力を持った教師がいます
全体を述べるときは abilities、そこから1つ取り出すときは the ability to do。この2段構えにすると、話しながらでも形を選び間違えにくくなります。
ライティング・タスク2
number と amount の使い分け
08 よくある質問
ability は数えられる名詞ですか。
どちらにもなります。能力をひとまとまりの量として述べるときは不可算、個別の能力を数え上げるときは可算です。limited ability のように程度を表す形容詞が付けば不可算、diverse abilities のように種類を表す語が付けば可算になります。
ability の複数形はいつ使いますか。
何ができるのかを項目として並べるときです。diverse abilities、different abilities、a range of abilities のように、種類の多さを示す語と組みます。人物が持っている個々の能力を評価する文脈でもよく使われます。
limited ability と limited abilities はどちらが正しいですか。
述べたい内容で変わります。教える力の程度が限られているという意味なら limited ability です。limited abilities も文としては成立しますが、持っている能力の範囲が限られているという意味になり、焦点が変わります。people with limited abilities のような使い方もあります。
ability の品詞は何ですか。able とはどう違いますか。
ability は名詞、able は形容詞です。置き換えられません。Students are able to access the library online. は形容詞なので be動詞のあとに来ますが、名詞を使うなら Students have the ability to access the library online. の形になります。
the ability to do と an ability to do はどちらを使いますか。
to不定詞で能力の内容を示すなら the ability to do が基本です。to不定詞がうしろから限定してどの能力かが決まるため、定冠詞が付きます。an ability to do も誤りではありませんが使われる場面は限られます。程度を述べたい場合は冠詞を付けず、limited ability to のように形容詞を添えます。
ability of doing とは書けませんか。
通常は使いません。「〜する能力」を表すなら the ability to solve complex problems のように to不定詞を続けます。of を使うのは the ability of young children to learn languages のように、能力を持っている側を示すときです。この形でも、そのあとに続くのは to不定詞であって動名詞ではありません。
ability を skill や capacity に言い換えられますか。
場合によります。人や組織が何かを実行できる力を強調するなら capability、訓練で身につけた技能なら skill です。ただし communication ability を communication capability、natural ability を natural capability と置き換えると不自然になります。capacity は受け入れられる量という意味が強く、The hospital has reached its capacity. のような文は ability では言い換えられません。
できないことを名詞で言うときは何を使いますか。
inability です。the inability to do の形で使います。disability は身体や精神の障がいを指す語なので、単に能力が足りないという意味では使いません。
09 まとめ
ability は不可算にも可算にもなる。ひとまとまりの能力なら不可算、個別の能力を並べるなら複数形
limited、great、similar のような程度の形容詞が付けば不可算。diverse、different、a range of なら複数形
特定の能力を名指しするなら the ability to do。程度を述べるなら冠詞なしで形容詞を添える
ability は名詞、able は形容詞。are ability という形にはならない
ability of doing とは書かない。to不定詞を続ける。of は能力を持っている側を示すときに使う
言い換えは skill か capability。capacity は容量の意味が強いので置き換えられないことがある
迷ったときは、その文が能力の程度を述べているのか、能力の種類を並べているのかを考えてみてください。どこまでできるかなら ability、何ができるかなら abilities です。