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スピーキング

This is already paid. はどこが間違い?前置詞が抜けやすい動詞(prepositional verb)の整理

This is already paid. 「これはもう支払い済みです」のつもりで言った一文ですが、実はこのままでは英語として不完全で、正しくは This is already paid for. と最後に for が必要です。同じように、「私は差別されました」を I was discriminated. と言うと、今度は against が抜けています。

どちらも、日本語では「〜を」と直接目的語を取る動詞が、英語では自動詞+前置詞のセットで働くために起こるミスです。この記事では、このセットを文法的に何と呼ぶのか、なぜ日本語話者は前置詞を落としやすいのか、どの動詞で特に起こりやすいのかを順に整理します。

01一語足りない英文:This is already paid. と I was discriminated.

まず、冒頭の2つの文を見てみましょう。どちらも単語は簡単で、言いたいことは伝わりそうに見えます。

This is already paid.for が抜けている

This is already paid for.これはもう支払い済みです

I was discriminated.against が抜けている

I was discriminated against.私は差別されました

discriminate(差別する)は、英語では自動詞です。「〜を差別する」と言いたいときは discriminate against + 名詞という形を取り、目的語は必ず against の後ろに置きます。能動態は They discriminated against me. であり、これを受動態にすると I was discriminated against. となって、against が文末に残ります。この against を落とすと、文として不完全になってしまいます。

pay の場合はもう少し細かい使い分けがあります。pay は「お金・金額・請求書」を目的語に取る他動詞として使えます(pay the bill / pay 500 yen)。ところが「買った物やサービス」を目的語にするときは pay for が必要です(pay for the meal)。「この食事はもう支払い済みです」では支払う対象が「食事」なので The meal is already paid for. となり、やはり for が文末に残ります。

このように、日本語では「〜を」と言うのに英語では前置詞がないと目的語を取れない動詞は、受動態になった瞬間に前置詞の抜けが起こりやすくなります。まずは、この「動詞+前置詞」のセットを文法的にどう呼ぶのかを整理しておきましょう。

02自動詞+前置詞で他動詞の働きをする「前置詞動詞」

discriminate against や listen to のように、動詞と前置詞が意味的に一体化し、前置詞の後ろに必ず目的語(prepositional object:前置詞の目的語)を伴う組み合わせを、文法用語で prepositional verb(前置詞動詞)と呼びます。wait for(〜を待つ)、look after(〜の世話をする)などもこの仲間です。

前置詞動詞のポイントは、動詞そのものは自動詞なのに、前置詞とセットになると他動詞のように振る舞うことです。たとえば laugh(笑う)は自動詞ですが、laugh at + 名詞で「〜を笑う」という他動詞に近い意味を持ちます。だからこそ、普通の自動詞では作れないはずの受動態が作れます。

自動詞なのに受動態が作れる例

He was laughed at by his classmates.(彼はクラスメイトに笑われた)

The problem will be dealt with soon.(その問題はまもなく対処される)

よく似た用語に phrasal verb(句動詞)があります。give up や let down のように、動詞と副詞的小辞(particle)が組み合わさって一つの意味単位を作るものです。見た目は似ていますが、次の2点で区別できます。

  • 語のセットが違う:particle として使われるのは up、down、in、out、on、off など限られた語で、前の動詞との結びつきが強いのに対し、前置詞は後ろの名詞句との結びつきが強い。
  • 代名詞の位置が違う:句動詞は目的語が代名詞のとき動詞と particle の間に挟めるが(She let them down.)、前置詞動詞は決して分割できない(She looked after them. であって、looked them after とは言えない)。
前置詞動詞(prepositional verb) 句動詞(phrasal verb)
組み合わせ 動詞+前置詞 動詞+副詞的小辞(particle)
listen to / discriminate against / wait for give up / let down / look up
代名詞の位置 分割できない(look after them) 間に挟める(let them down)

用語そのものを覚える必要はありませんが、「このセット全体で一つの他動詞」と捉える発想は重要です。listen という動詞を単体で覚えるのではなく、listen to までを一語のように覚えておくと、前置詞の抜けは大きく減ります。

ワンポイントコラム

「前置詞動詞」という用語について

prepositional verb の訳語には、「前置詞動詞」のほかに「前置詞付き動詞」を使う文献もあります。指しているものは同じです。

また、日本の学校文法では、動詞+前置詞や動詞+副詞の組み合わせをまとめて「群動詞」あるいは広い意味での「句動詞」と呼ぶ伝統があり、前置詞動詞と句動詞をここまで細かく区別しないのが普通です。学校英語で「熟語(群動詞)」として覚えた表現の中に、この記事で言う前置詞動詞と句動詞の両方が混ざっている、という関係になります。

03なぜ日本語話者は前置詞を落としてしまうのか

原因ははっきりしていて、日本語との対応のズレです。日本語の「差別する」は「〜を」を直接取る他動詞です。「彼を差別する」と言うとき、「彼」と「差別する」の間に前置詞にあたる要素はありません。この感覚のまま英語に直訳すると、discriminate him という形が自然に出てきてしまいます。

受動態になると、さらに抜けやすくなります。「差別される」という日本語には、against に相当する要素がどこにも現れないからです。「私は差別された」を頭の中でそのまま英語に置き換えると、I was discriminated で文が完成したように感じられて、文末の against に意識が向きません。

対策として有効なのは、受動態を作るときに一度能動態を経由することです。「誰かが私を差別した」を英語にすると They discriminated against me. です。この目的語 me を主語に引き上げれば I was discriminated against. となり、against は自然に文末へ残ります。能動態の形が前置詞込みで正しく頭に入っていれば、受動態で前置詞が消えることはない、という関係になっています。

結局のところ、前置詞込みのセットで動詞を覚えているかどうかが分かれ目です。次のセクションで、日本語の感覚とズレやすい頻出の前置詞動詞をまとめておきます。

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04前置詞が抜けやすい動詞リスト

受動態で特に抜けやすいもの

discriminate against と同じく、受動態にしたときに前置詞が文末に残るタイプです。日本語では「〜される」の一語で終わるため、抜けたことに気づきにくいグループです。

表現 意味 例文
be discriminated against 差別される She felt she was discriminated against at work.
be laughed at 笑われる Nobody wants to be laughed at.
be looked down on 見下される Manual jobs are sometimes looked down on.
be dealt with 対処される The complaint was dealt with quickly.
be provided for 養われる、生活の面倒を見てもらう The children were well provided for.
be tampered with 不正に細工される Smoke detectors must not be tampered with.

「〜を」「〜に」の感覚とズレるもの

受動態に限らず、能動態のままでも前置詞が落ちやすいグループです。右の列の誤り例は、いずれも日本語の「〜を」「〜に」をそのまま英語に写したときに出てくる形です。

動詞+前置詞 意味 前置詞が抜けた誤り
listen to 〜を聞く ✗ listen music
apply for 〜に応募する ✗ apply the job
graduate from 〜を卒業する ✗ graduate university
arrive at / in 〜に到着する ✗ arrive the station
apologize to 〜に謝る ✗ apologize him
complain about 〜について不満を言う ✗ complain the service
object to 〜に反対する ✗ object the plan
participate in 〜に参加する ✗ participate the event
respond to 〜に応じる ✗ respond the email
suffer from 〜に苦しむ ✗ suffer stress
depend on 〜に頼る、〜次第である ✗ depend the weather
consist of 〜から成る ✗ consist three parts
agree with(人)/ agree to(提案) 〜に同意する ✗ agree him

agree のように、相手が「人」なら with、「提案・条件」なら to と、前置詞によって使い分けがあるものもあります。リストを丸暗記するというより、自分がスピーキングやライティングでよく使う動詞について、前置詞込みの形はどうだったかを一度確認しておくとよいでしょう。

おまけ:能動態がほぼ消えた仲間

同じ構造から生まれた決まり文句も2つ紹介しておきます。I'm done for.(もうおしまいだ)は、do for + 人(〜を破滅させる)という動詞+前置詞のセットの受動態が起源で、前置詞が文末に残っている点は be paid for とまったく同じです。ただし、能動態の do for を「破滅させる」の意味で使うのは現在では古風なイギリス英語で、まず耳にしません。そのため done for は、受動態というより形容詞化した決まり文句として丸ごと覚える表現になっています。spoken for(すでに約束済み、予約済み)も同じ仲間です。

化石化した受動態の決まり文句

I'm done for.(もうおしまいだ)

All the seats are already spoken for.(席はすべて予約済みだ)

なお、for のない I'm done. は「終わった、もう済んだ」という別の表現です。for が一語付くかどうかで意味が大きく変わるのも、前置詞とセットで意味が決まる前置詞動詞ならではの現象と言えます。

こうした語法のずれは、自分の英文の中では自分ではなかなか気づけません。書いた英文をまとめてチェックしたいときは、誤用ファインダーのようなツールで確認してみるのも一つの方法です。

IELTS学習アプリ Misuse Finder(誤用ファインダー) 英文に含まれる不自然な語法・誤用をAIが検出し、修正案を提示します。

05まとめ

最後に、この記事のポイントを整理します。

  • discriminate against や listen to のように、自動詞+前置詞のセットで他動詞の働きをするものを前置詞動詞(prepositional verb)と呼ぶ
  • 前置詞動詞は受動態が作れるが、その際は前置詞が文末に残る(I was discriminated against.)
  • 日本語の「〜を」「〜される」には前置詞にあたる要素がないため、直訳すると前置詞が落ちやすい
  • 受動態で迷ったら、一度能動態(They discriminated against me.)を作ってから主語を入れ替える
  • 動詞は単体ではなく、前置詞込みのセットで一語のように覚える

前置詞の抜けは発音や語彙に比べると目立たないミスに見えますが、採点基準(Band Descriptors)の Grammatical Range and Accuracy の観点では評価に関わる部分です。まずは今日出てきた動詞から、前置詞込みのセットで言い直す練習を始めてみるとよいでしょう。

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Hibiki Takahashi

この記事を書いた人

Hibiki Takahashi

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象にIELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住14年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

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