今週、ライティングサミットが200回を迎えました。
毎週1回のペースで積み上げてきた数字ですが、「200回」という節目を目の前にすると、やはり感慨深いものがあります。「ライティングサミット」に改名してからの200回ですので、前身の「ライティングチャレンジ」から数えるとトータルはさらに多くなります。始めた頃は、ここまで続くとは正直なところ思っていませんでした。「参加者がゼロになったらやめよう」というのが当初からの考えでしたが、おかげさまで6年以上、途切れることなく続けることができています。
では、なぜライティングサミットは始まったのでしょうか。今日はその原点となった話をしたいと思います。
話は2019年の秋にさかのぼります。当時のTwitterで実施した「企画」、それが「12週間チャレンジ」でした。この企画での結果が、のちにライティングチャレンジ、そしてライティングサミットへと発展していくことになります。
講師にとっても挑戦だった12週間チャレンジ
2019年9月、Twitterのプレゼント企画として実施した「12週間チャレンジ」。企画の内容は、ライティングで「6.5の壁」に当たって伸び悩んでいる方を対象に、モニター生として12週間無料で講義に参加していただくというものでした。
ただ、講師としても、ひとつの「実験」を試みたいという気持ちがありました。それまでにも短期間でスコアアップを実現するための方法はいくつか持っていましたが、このチャレンジでは、これまでとは異なる新しいアプローチを試してみることにしました。
その企画に参加してくださった方のお一人が、英検1級・TOEIC満点という輝かしい英語バックグラウンドをお持ちの上田哲也さん(@English09040)でした。いまでは Overall 9.0を達成され、ライティングも8.5を保有されている上田哲也先生ですので、いずれはご自身でも達成されていたと思います。しかし当時は、ライティングのスコアが6.5で長い間行き詰まっておられる状況でした。(その後のご躍進は皆さんが知るところです。以降、「上田先生」と呼ばせていただきます。)
「6.5の壁」とよく言われますが、独学で順調に伸びてきた方でも、6.5から先はなかなかスコアアップができないことがよくあります。6.5より上のスコアレンジは、語彙や文法の対策だけではスコアメイクが難しい領域です。英語の基礎力が高いとはいえ、12週間でその壁を突破するのは、講師にとっても大きな挑戦でした。
素直さが壁を破る
最初のエッセイを拝見した段階で、その方が抱えている問題はおおよそわかります。ここでは詳細を割愛しますが、どのような勉強スタイルをお持ちか、語彙や文法の基礎力はどのくらいか、アイデアの出し方はどうか、説明する力はどのくらいあるか、などを判断します。それぞれの方に合った指導方針を定めることが、その先の結果を大きく左右するからです。
ライティングで7.0以上を目指すうえで、採点基準(Band Descriptors)の観点から見ると、文法や語彙のレベルの高さだけでは達成できないことがあるのは周知の事実です。特に「Task Response(タスクへの応答)」と「Coherence and Cohesion(首尾一貫性とつながり)」は、英語力があっても乗り越えるのが難しい重要な領域です。
そして、もうひとつ見落とされがちな要素があります。それが「素直さ」です。上級者であってもアドバイスを素直に聞き入れることは意外と難しく、いや、上級者になればなるほど、これまでの自分のやり方への自信が邪魔をすることがあります。
上田先生は、これまで自分が信じてきた考えをいったん白紙に戻し、私の言葉を100%信頼してくださいました。その姿勢が、スコアアップを加速させた大きな要因の一つだったと感じています。
自分だけのモデルアンサーを活用する
インターネット上には、IELTSのモデルアンサーがたくさん出回っています。しかし、使い方を間違えるとほとんど役に立たないどころか、むしろ逆効果になることさえあります。
モデルアンサーを読んでいると、つい「こんな表現が使いたい」「こういう文体で書きたい」という気持ちが先に立ってしまいます。かっこいい表現や洗練された文章に憧れるのは自然なことです。でも、そこに意識が向きすぎると、「どうアイデアを展開するか」という、ライティングの核心部分を考える力がだんだん薄れていきます。表現は借りられても、思考のプロセスは自分で鍛えるしかありません。
大切なのは、まず自分で書いてみること。自分のエッセイと比べて初めて、「ここでこう展開すればよかったのか」という気づきが生まれ、それが深い学びになります。
12週間チャレンジでは、自力でエッセイを書いていただき、参加者それぞれが書いた回答をベースにしたオリジナルのモデルアンサーを作成しました。自分のエッセイから生まれたモデルアンサーだからこそ、「次はこう書こう」という具体的なイメージが持ちやすくなります。これは、その後の「ライティングチャレンジ」や「ライティングサミット」でも継続されています。
この「書いてから学ぶ」というサイクルを12週間続けることで、確かな力が積み上がっていったのです。
2019年のクリスマスプレゼント
12週間のチャレンジは、2019年12月8日に終了しました。上田先生は翌週の17日にIELTSを受験されました。
結果が届いたのは、2019年のクリスマスのことでした(当時は結果が出るまでが長かった!)。
目標は7.0でしたが、結果はライティング7.5。チャレンジ開始前の6.5からわずか12週間で1.0のスコアアップです。このツイートを見た瞬間の気持ちは、今でも鮮明に覚えています。
上田先生は後に、当時の気持ちをこのように振り返ってくださっています。
上田哲也さんからのメッセージ(当時)
この企画に参加するまでの僕は、IELTSにどう取り組んでいいかわからずにいました。モデルアンサーも探せばいくらでもあります。でもそれぞれが異なるスタイルで書かれていたり、真似できないほど高度な書き方をされていたりすることがほとんどで、そこから学ぶというのはとても難しいものでした。でもこの企画が始まり、ご指導いただくようになってから、進むべき道が一本に絞られ、迷うことがなくなり、自分の少し上のレベルへと徐々に引き上げていただけたことで、ここまで来ることができたと思っています。今回のライティング7.5は、取り組んだタスクの類似問題だったという運もありましたが、皆さんのご指導なくして達成できなかったものと思っております。
「進むべき道が一本に絞られた」という言葉が印象的です。情報が多すぎて何をすればいいかわからなくなる、というのはIELTS学習者に非常によくある状態です。その迷いを取り除くことが、短期間のスコアアップにつながったのだと感じています。
同じチャレンジに参加していたもう一名の方も、その後7.0を達成されました。2名参加、2名とも7.0以上達成という結果になりました。
2020年も2名全員が達成
2019年の手応えを受けて、2020年にも同様の12週間チャレンジを実施しました。参加者は新たに2名。そして、この2名も12週間でそれぞれ7.0および7.5を達成されました。
2回の企画を通して4名全員が12週間以内にライティング7.0以上を達成、4戦全勝という結果になりました。
もちろん、努力されたのは参加者の方々です。ただ、4名連続という事実が示しているのは、やるべきことを正しい順序で積み上げれば、12週間という期間でも確かな変化が起きるということです。また、当然ながら「一人で取り組むより、フィードバックを受けながら取り組む方が圧倒的に伸びる」ということも分かりました。
IELTSライティングの勉強でよくある失敗は、正しい方向へのアプローチが定まらないまま時間を費やしてしまうことです。語彙を増やすことに力を注いでも、アイデアの組み立て方が弱ければスコアは伸びません。書いた量を増やしても、フィードバックなしでは間違ったクセが定着してしまうこともあります。12週間チャレンジが機能した理由は、この「方向性の明確化」と「継続的なフィードバック」の2点にあったと考えています。
ライティングサミットが目指すもの
12週間チャレンジの結果を受けて、同じ仕組みを授業として形にしたのが「ライティングチャレンジ」でした。参加者の方々から「ぜひ授業として続けてほしい」というご要望をいただいたことがきっかけです。その後、名称を「ライティングサミット」に変更し、現在まで継続しています。
サミット(summit)という言葉には「頂上」という意味があります。IELTSライティングでスコア7.0以上という目標を達成するために、毎週のぼり続ける場所として名付けました。
ライティングサミットの核心は、「書く、フィードバックを受ける、修正する」というサイクルを繰り返すことです。毎週タスクが出題され、受講生はそれに向けてエッセイを書きます。講師からのフィードバックを受けて書き直し、完成させる。地道に見えますが、これがスコアに直結する最短ルートだと確信しています。
続けてきた中で感じるのは、「スコアが伸びる人には共通点がある」ということです。それは、英語力の高さでも、地頭の良さでもありません。「正しい方向で、継続して取り組めるかどうか」です。12週間チャレンジの4戦全勝という結果も、参加者全員がこのサイクルを愚直に続けてくださったことによるものです。
逆に言えば、今スコアが伸び悩んでいる方の多くは、「何をすればいいかがわからない」か「方向性は合っているが継続できていない」かのどちらかです。ライティングサミットはその両方を解決するための場として、毎週開催しています。
独学でエッセイを書き続けていると、自分では気づけないミスやクセが定着してしまうことがあります。語彙はたくさん知っているのにタスクの問いに答えられていない、構成は整っているのにアイデアの展開が弱い、といった問題は、自分一人ではなかなか見えにくいものです。毎週フィードバックを受け続けることで、自分のエッセイの問題点が少しずつ明確になっていきます。そして「何をすべきか」がはっきりすれば、あとは積み重ねるだけです。スコアが上がる前に、まず「迷いがなくなる」という変化が訪れます。この変化こそが、スコアアップの本当のはじまりです。
また、毎週同じ仲間が授業に来るという環境も、継続を後押しする力になっています。一人で続けることが難しいIELTS対策を、仲間と一緒に積み上げていける。それもライティングサミットが6年以上続いている理由の一つだと感じています。
さいごに
ライティングサミット200回という節目を迎えられたのは、毎週参加し続けてくださっている受講生の皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。
6年前の2019年クリスマスに届いた一通のツイートがなければ、ライティングサミットは存在しなかったかもしれません。あの12週間で確認できたことを形にしようとしたから、続けてこられたのだと思っています。
これからも、毎週のぼり続ける場所であり続けます。次の100回、200回と、受講生の皆さんと一緒に積み上げていけることを楽しみにしています。
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この記事を書いた人
Hibiki Takahashi
日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住14年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。
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