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ライティング・タスク2

ライティングはリスク・リワードの連続

IELTSライティング・タスク2では、250語のエッセイを40分で書きます。ある程度英語を勉強してきた方であれば、この語数と時間の制約そのものは、さほど高いハードルではないかもしれません。しかし、より高いスコアを目指そうとした瞬間から、話は変わってきます。

プランニングに時間をかけるべきか。より高度な語彙を使うべきか。複雑な構文に挑戦すべきか。こうした選択の一つひとつが、実はリスクとリワードのトレードオフになっているのです。

この記事では、ライティング・タスク2における「リスク・リワード」の考え方を整理し、自分に必要な判断ができるようになるためのヒントをお伝えします。

01250語・40分という舞台

まず前提を整理しておきましょう。タスク2の制限時間40分のうち、書くこと自体に充てられる時間はどのくらいでしょうか。

多くの方が以下のような時間配分をされていることが多いでしょう。

タスク2の時間配分の目安

  • プランニング:5〜10分
  • ライティング:約30分
  • 見直し:2〜3分

仮に300語を30分で書くとすれば、1分あたりおよそ10語のペースです。これは、英語に慣れた学習者であれば十分に対応できる速度です。つまり、スコアを決めるのは「書けるかどうか」ではなく、「何をどう書くか」にかかってきます。

02内容面のリスク・リワード

より高いスコアを目指すには、議論の質を上げなければなりません。論理のスキをなくし、説得力のある構成にするためには、綿密なプランニングが欠かせません。

しかし、プランニングに時間をかければかけるほど、実際に書く時間は減ります。ここに最初のリスク・リワードのトレードオフがあります。

内容面でのリスク・リワード

リワード

論理的に一貫した、スキのないエッセイが書ける

リスク

執筆時間が削られ、語数不足や推敲不足につながる可能性がある

一定のレベルに達すれば、プランニングの時間を増やすほど、エッセイの内容面は改善される傾向にあります。しかし、それと引き換えに書く時間が失われます。どこで折り合いをつけるかは、自分の現在の実力と目標スコアによって変わってきます。

たとえばバンド6.0未満の段階では、プランニングより語数を確保することの方が先決かもしれません。一方、バンド7.0を狙う段階では、プランニングの質こそがスコアの分かれ目になってくるでしょう。

03語彙のリスク・リワード

語彙(Lexical Resource)はIELTSの採点基準の一つです。より高いレベルの語彙を使えば、スコアに反映されます。これが表現面(語彙)のリワードです。

しかし、普段使い慣れていない単語を使おうとすれば、スペルミスや文脈のズレ、コロケーションの誤りといったミスが発生しやすくなります。これがリスクになります。

語彙のリスク・リワード

リワード

高レベルの語彙を正確に使えれば、Lexical Resourceの高いバンドスコアを狙える

リスク

使い慣れない単語を使うことで、ミスや不自然な表現が増える

たとえば mitigate という単語を使いたいとします。この語が正確に使えればプラスの評価につながります。しかし、文脈に合わない使い方をしてしまえば、むしろマイナスの評価につながる可能性があります。

語彙の選択においても、リワードを得るためにどこまでリスクを取るかという判断が必要になってくるのです。

04文法のリスクとリワード

文法(Grammatical Range and Accuracy)も同様です。複雑な構文(ストラクチャー)を使いこなすことができれば、スコアアップの可能性がありますが、それは常にミスの危険性をはらみます。

文法構文のリスク・リワード

リワード

複雑な構文を正確に使えれば、文法スコアの幅が広がる

リスク

慣れていない構文を使うことで、文法ミスや不明確な文が増える

たとえば関係詞節や分詞構文などは、正確に使えれば高評価につながるでしょう。しかし、使い慣れていない段階で無理に挿入しようとすると、文全体が崩れてしまうことがあります。何より、伝えたい内容がうまく伝わらずに、内容面にまで影響を及ぼす危険性すらあります。

ここでも「より高いリワードを狙うほどリスクが増える」という構造は変わりません。

05自分に必要なリワードを見極める

ここまでの話を整理すると、ライティング・タスク2における1つ1つの判断は、すべてリスクとリワードのトレードオフになっています。

では、どうすればよいのでしょうか。

大切なのは、自分が必要とするリワードに見合ったリスクを取ることです。

バンド5.5を目指している段階で、バンド8.0向けの難解な語彙を無理に使う必要はありません。逆に、バンド7.0を狙っているのに、常に安全策ばかり取り続けていては、そのスコアに届くリワードは得られません。

スコア別のリスク・リワードの考え方

  • バンド5.5以下:まず語数と基本的な文法の安定を優先。余分なリスクは避ける。
  • バンド6.0〜6.5:語彙・文法ともに、使い慣れた表現を正確に使うことを意識する。
  • バンド7.0以上:ある程度、高度な語彙・構文への挑戦が必要。ただし過信は禁物。

自分の現在の実力と目標スコアを照らし合わせたとき、「どのリスクを取るべきか」が見えてきます。これがライティング・タスク2における戦略の核心です。

06リスクを安全圏に変える練習

ここまで読んで、「リスクが怖くて挑戦できない」と感じた方もいるかもしれません。しかし、大切なことがあります。今リスクに感じていることは、練習を重ねることで安全圏に変えられるということです。

初めて mitigate を使ったときは不安だったとしても、10回・20回と実際の文章の中で使っていけば、やがてそれは「迷わず使える語彙」になります。文法構文も同じです。最初はリスクだったものが、練習によって確実に使える武器になっていきます。

つまり、普段の練習こそがリスクを取る場であり、本番はその成果を発揮する場です。本番で初めて試す語彙や構文は、リスクが高すぎます。練習の場でリスクを取り、失敗しながら習得していく。その積み重ねが、本番でのリワードにつながります。

07練習と本番でリスク戦略を変える

上記の考え方を踏まえると、練習と本番ではリスクへの向き合い方を変えるべきだとわかります。

普段の練習では、積極的に高いレベルに挑戦しましょう。知っているけれど使いこなせていない語彙、まだ不安定な構文、もっと精緻にできるはずのプランニング。こうした「少し背伸びした挑戦」こそが、安全圏を広げる練習になります。

本番では逆に、自分がコントロールできる範囲の最大値を使うことを意識しましょう。「これは練習で何度も使ってきた」と自信を持って言える語彙・構文の中で、できる限り高いレベルのものを選ぶのです。本番で初めて試みる表現は、たとえ高レベルであっても、リスクに見合うリワードを得られない可能性が高くなります。

08リスク感覚はスコアとともにズレていく

最後にもう一つ、覚えておきたいことがあります。

スコアが上がるにつれて、かつてリスクだったものが当たり前になっていきます。バンド5.5の段階でリスクに感じていた語彙が、バンド6.5の段階では安全圏に入っている。これはスコアアップの自然な流れです。

しかし、それと同時に、新たなリスクを取らなければ次の壁を越えられなくなります。今の自分には「ちょうど少し背伸びした挑戦」が何かを常に意識しておくことが、スコアを伸ばし続けるうえで重要です。

スコアアップとは、安全圏を少しずつ広げ続けることでもあります。現在の安全圏に満足して挑戦をやめてしまうと、スコアはそこで止まります。一方で、実力とかけ離れたリスクを取り続けても、ミスが増えるだけです。自分の現在地を把握しながら、適切なリスクを取り続けること。それがライティング・スコアを伸ばす本質的なアプローチです。

09まとめ

IELTSライティング・タスク2は、単に英語を書く試験ではありません。限られた時間と実力の中で、一つひとつの判断においてリスクとリワードを天秤にかける試験でもあります。

プランニングの時間、語彙の選択、文法構文の使い方。いずれも「より高いリワードを得るためにはリスクが伴う」という構造になっています。

そして、今リスクに感じていることは練習によって安全圏に変えられます。練習では積極的にリスクを取り、本番では習得した力の最大値を発揮する。その繰り返しの中で、スコアは少しずつ伸びていきます。

あなたが今取るべきリスクはどこにあるでしょうか。現在の自分の実力と目標スコアを見つめ直すことが、戦略を立てる第一歩です。

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Hibiki Takahashi

この記事を書いた人

Hibiki Takahashi

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象にIELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住14年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

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