IELTSの試験結果を受け取ったあと、「再採点(リマーク)」を申請できることをご存じですか?正式にはEnquiry on Results(EOR)と呼ばれるこの制度は、採点結果に不服がある場合に活用できる受験生の権利の一つです。
この記事では、再採点制度の仕組みから申請方法、スコアが上がる可能性、そして2023年12月から日本でも導入された「One Skill Retake」との違いまで、2025年最新情報を詳しく解説します。
再採点(リマーク)とは
IELTSの再採点(リマーク)とは、試験結果に納得がいかない場合に、採点の見直しを申請できる制度です。正式名称はEnquiry on Results(EOR)と呼ばれています。
意外と知られていない制度
以前、X(旧Twitter)で再採点に関するアンケートを実施したところ、興味深い結果が得られました。リマークの利用経験者は約20%にとどまり、制度自体を知らなかったという人も20%いることが分かりました。
2019年12月17日に実施したアンケート結果はこちら です。
再採点は誰でも利用できる受験生の権利の一つです。定められた手数料を支払うことで、もう一度採点をし直してもらうことができます。
- 再採点(EOR)の基本ルール
- スコアが変わらなかった場合:手数料は返金されない
- スコアが上がった場合:手数料は全額返金される
- スコアが下がることはない(後述)
再採点は誰が担当するのか
IELTSの再採点は、最初の採点をした試験官とは別の試験官が担当します。通常は、最初の採点をした試験官よりも上級の試験官(経験の長い試験官)が採点を行います。
バイアスのない採点
リマークの採点をする試験官は、オリジナルの試験結果を見ずに、バイアスのない状態で採点を行います。これは、公平性を担保するための重要な仕組みです。
試験官もミスをする
試験官は「採点基準(Band Descriptors)」を元に採点をしていますので、基本的には誰が採点をしても同じスコアになるのが原則です。しかし、試験官も人間ですので、時には主観が入ることもありますし、ミスをすることもあります。
試験官は常日頃から厳しいトレーニングを受けており、定期的にその能力を確認するための試験も受けていますが、100%パーフェクトな採点をすることは不可能に近いことです。だからこそ、公平性を維持するために再採点(リマーク)の制度が設けられているのです。
- 試験結果がブレる理由
- 試験官の主観が入る可能性がある
- 特にスピーキングでは最大1.5程度ブレることもある
費用と申請期限【2025年最新】
リマークにかかる費用は、受験した運営団体によって異なります。以下は2025年最新の情報です。
日本国内のリマーク費用
- 日本国内のEOR費用(2025年現在)
- 英検協会(IELTS/IELTS for UKVI):15,000円
- IDP:費用は会場により異なる(要確認)
- JSAF:費用は会場により異なる(要確認)
- British Council:15,000円程度
※2025年9月1日より、英検IELTS公式テストセンターでは受験料が改定されています。リマーク費用も変更されている可能性がありますので、最新情報は各運営団体のウェブサイトでご確認ください。
複数の技能を指定しても同料金
申請の際に、どの技能について再採点を希望するかを選ぶことができます。しかし、1技能を選んだ場合でも4技能すべてを選んだ場合でも同じ料金がかかります。
だとすれば、4技能すべてを選んだほうがお得ですよね。ただし、チェックする技能数が多くなるほどリマークの返却に時間がかかります。また、正解が存在するリスニングやリーディングでスコアが修正される可能性は、ライティングやスピーキングに比べて格段に低いです。そのため、出願などで結果を1日でも早く受け取りたい方は、必要な技能だけ選ぶことも検討しましょう。
申請期限に注意
リマークの申請期限は運営団体によって異なりますが、概ね試験日から6週間以内です。
- 申請期限の注意点
- 英検協会:試験日から39日以内
- IDP/JSAF/British Council:試験日から6週間(42日)以内
- 結果を受け取った日ではなく、試験を受けた日から起算
- 期限を1日でも過ぎると申請は受理されない
結果が届くまでの期間
リマークにかかる期間は、2〜21日程度が目安です。ただし、混雑状況によっては最大6週間程度かかることもあります。
リマーク申請中は元の成績が一時的に無効となりますので、大学などに提出する必要がある方は事前に担当者に相談しておくことをお勧めします。
申請方法と必要なもの
リマークの申請方法は、受験した運営団体によって異なります。
コンピューター版IELTSの場合
コンピューター版IELTSを受験した場合、多くの運営団体ではオンラインで申請が可能です。
- オンライン申請の流れ(IDP/British Councilの場合)
- IELTS Test Taker Portalにログイン
- 「Past tests」から該当の試験を選択
- 「Request re-mark」をクリック
- 再採点したい技能を選択し、支払いを完了
ペーパー版IELTSの場合
ペーパー版IELTSの場合は、申請フォームの郵送が必要な場合があります。
- 申請に必要なもの(運営団体により異なる)
- 申請フォーム(Enquiry on Results Application Form)
- 振込証明書(コピー可)
- Test Report Form(原本が必要な場合あり)
英検協会主催のIELTSの場合は、指定書類と振込を証明するものを郵送するだけでスコアレポートの提出は不要です。混雑状況にもよりますが、数営業日で再採点の結果が出ることもあります。
スコアが上がりやすい科目
再採点でスコアが上がることが最も期待できるのは、スピーキングとライティングです。
なぜスピーキングとライティングなのか
どちらの科目も採点に試験官の主観的な要素が入ってくるからです。特にスピーキングは試験官によるスコアの幅が大きいため、再採点申請によって1.0以上上がることも珍しくありません。
ライティングも、スピーキングほどではないものの、再採点によって0.5〜1.0程度上がることがあります。
スコアが上がる可能性はどのくらい?
正確な数字は公表されていませんが、経験的にスコアが上がる可能性は10〜20%程度と言われています。ただし、元のスコアによって傾向が異なります。
- スコアが上がりやすいレンジ
- 元のスコアが6.0以下:スコアが上がる可能性が比較的高い
- 元のスコアが6.5以上:スコアが上がる可能性が比較的低い
これは、試験官が6.5〜7.0あたりの回答を非常にたくさん見ているために、そのレンジで採点ミスをする可能性が非常に低いためと考えられます。
リスニング・リーディングは上がりにくい
リスニング・リーディングははっきりとした正答があるため、採点に不備がない限りスコアは上がりません。正答数のカウントミスなどが稀にある可能性はありますが、過去にリスニング・リーディングのリマークでスコアが上がったケースはほとんど聞いたことがありません。
スコアが下がる可能性は?
「再採点を申請して結果のスコアが下がることはありますか?」という質問をよくいただきます。
結論から言うと、再採点(リマーク)でスコアが下がることはありません。公式サイトには明記されていませんが、British Councilに問い合わせたところ、以下の回答を得ました。
- British Councilからの回答
- "If you undertake an Enquiry on Results, your mark will either increase or remain the same."
- (再採点を申請した場合、あなたのスコアは上がるか、そのまま変わらないかのどちらかです。)
つまり、リマークを申請してスコアが下がるリスクはゼロです。費用がかかるというデメリットはありますが、スコアが上がれば全額返金されますので、目標スコアまであと少しという方は検討する価値があります。
One Skill Retakeとの違い
2023年12月から日本でも「One Skill Retake」という新しい制度が導入されました。リマーク(EOR)とは異なる制度ですので、違いを理解しておきましょう。
One Skill Retakeとは
One Skill Retakeは、4技能のうち1つだけを再受験できる制度です。元の試験結果に満足できない場合に、全技能を受け直すのではなく、1つの技能だけを再試験することができます。
- One Skill Retakeの特徴
- コンピューター版IELTSのみ対応
- 元の試験から60日以内に申請が必要
- 4技能のうち1つだけ再受験可能
- 再受験したスコアで新しいTRFが発行される
- 費用は通常の受験料より安い
EORとOne Skill Retakeの比較
- EOR(再採点)
- 内容:同じ回答を別の試験官が再採点
- 費用:15,000円程度(スコアが上がれば返金)
- 期限:試験日から6週間以内
- 結果:スコアが上がるか、変わらないか
- One Skill Retake(再受験)
- 内容:1技能だけ新たに試験を受け直す
- 費用:12,000円〜18,000円程度
- 期限:試験日から60日以内
- 結果:新しいスコアに置き換わる(下がる可能性もある)
EORは「採点ミスがあったかもしれない」と思う場合に有効で、One Skill Retakeは「実力は出せたがもっと上を目指したい」という場合に有効です。状況に応じて使い分けましょう。
なお、One Skill Retakeは受け入れ機関によって認められない場合がありますので、申請前に必ず志望先に確認してください。
まとめ
IELTSの再採点(リマーク)制度について解説しました。
再採点は受験生の権利の一つであり、特にスピーキングやライティングでスコアが予想より低かった場合には検討する価値があります。スコアが下がるリスクはゼロで、上がれば費用も全額返金されます。
目標スコアまであと0.5〜1.0足りないという方は、ぜひこの制度の活用を検討してみてください。
- まとめ
- 再採点(EOR)は採点結果に不服がある場合に利用できる制度
- 費用は15,000円程度、スコアが上がれば全額返金
- 申請期限は試験日から6週間以内(英検は39日以内)
- スピーキングとライティングでスコアが上がりやすい
- スコアが下がることはない(上がるか、変わらないか)
- One Skill Retakeとは異なる制度なので使い分けが重要
- 結果が届くまで2〜21日程度(最大6週間)
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この記事を書いた人
Hibiki Takahashi
日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,000名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住13年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。
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